家 2 星谷サイド

 天霧さんの部屋にやって来た私は、不躾だと思いながらも部屋の中を観察してしまう。

 もしかしたら天霧さんにはぬいぐるみとか、意外と可愛い趣味でもあるのかなと思ったけど、そんなことはなかった。

 部屋の中にはベッドと勉強机、それにタンスとクローゼットぐらい。シンプルというか殺風景だ。

 でもこれも天霧さんっぽいな、なんて思ってしまう。

 感傷に浸っている場合じゃなくて、今は天霧さんをベッドで休ませないと。

 私はゆっくりとした足取りで、天霧さんをベッドに連れて行き、ゆっくりとベッドに寝かそうとする。

 ベッドの端の方にコンビニの袋を置いて、天霧さんを支えながらゆっくり、ゆっくり……。

「きゃっ」

 後もう少し――というところで、天霧さんは限界だったんだと思う。力なく重力に従って倒れた天霧さんにグンっと引っ張られて、私が天霧さんを押し倒したような体勢になってしまった。

 多分ちょっと無理させたせいで、顔を熱で赤くした天霧さんの顔が近い。

 初めてこんな近い距離で天霧さんの顔を見てしまった。いつも遠くから眺めるぐらい、近くても、恥ずかしくてなかなか直視出来なかった天霧さん。

 ハッキリとした目鼻、左右対称な少し切れ長の目は可愛いとかそういうのより綺麗だ。今は体調が悪いからあまり血色の良くない唇だけど、今すぐ触れてみたい程柔らかそうだった。

 そうやって見とれてしまった私の目を見ながら、天霧さんは言葉を漏らす。

「……可愛い――あっ」

 その言葉で我に返った私は、急いで身体を持ち上げて天霧さんの目から逃れる。

「や、やっぱりしんどかったわよね! ごめんね、無理して押しかけちゃって」

 私は気恥しさを紛らわせようと、コンビニの袋を取ると中身を適当に出す。

「ほら、ゼリーとか飲み物とか色々買ってきたの!」

 部屋はクーラーが効いているはずなのに、少し汗が滲み出てくる。

 人の顔をまじまじ見るなんて今まで無かったし、ましてや目が合って見つめ合ったなんて……すごく恥ずかしい……。

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