教室 3
六限目は担当を決めて、そこから全体の流れを決めて終わりを迎えた。
私はそんなことよりも彼女――星谷さんと一緒になれたことが嬉しかった。星谷さんと同じ役割、楽しみだ。一緒に文化祭を過ごすことができて。
「ねえ天霧さん」
嬉しさに頬を緩ませていると、私を呼ぶ声が聞えた。もちろん声の主は星谷さんだ。
「どうしたの?」
私が聞き返すと星谷さんは丁度人が居なくなった前の席に座って笑顔を向けてくれる。
私はその笑顔に思わず見とれてしまう。
真正面から私に向けられる笑顔。私だけに向けられている笑顔、嬉しさと、誰に対してか分からないけど優越感が私の心を満たす。
「一緒に頑張りましょう。ただそれだけ」
そうして星谷さんは席を立って行ってしまった。すぐに元々座っていた生徒が戻ってくる。
もう少し話してみたかったな。
帰りのホームルームの最中、私は星谷さんの事ばかり考えていた。運がいいことに座席は私の左前。横六列、縦六列の教室の座席。私の席は右側、廊下側の後ろから二番目。星谷さんの席は右から三列目、前から三列目の席だ。
前に立つ先生の方を見ると自然に星谷さんが視界に入る。逆に言うと星谷さんを見ていても前を向いているとみなされる。実際には視線で授業を聞いていないことがバレるだろうから視界にいれるだけになりそうだけど……。
本当にどうして今まで星谷さんのことを知らなかったのだろう。あんなに可愛い子なのに。
あの時眠たくなって良かった。サボって良かった。こんな幸運はもうないだろう。星谷さんのおかげで今年の文化祭は少し楽しくなりそうだ。
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