教室 2
六限目が始まる少し前、私は教室に戻った。
教室ではいくつかのグループに分かれていた、なにをするのか決まったのだろうか? それともいつも通り固まっているだけなのだろうか。
そんなことを考えながらも私の目は教室内を見渡している。
大丈夫かどうか聞いてくる先生に適当に返事を返しながら、席に着いて彼女を探す。
どこにもいない……忙しいのかな?
程なくして休み時間終了のチャイムが鳴って、みんな自分の席へ着く。丁度そのタイミングで彼女が帰ってきた。そして彼女は席に着かず、五限目と同じで前に立ち、そして――。
「みんなごめんなさい!」
と手を合わせた。
なにを謝っているのだろうか? そう思っているのは当然私だけでクラス内は落胆した空気が漂う。
「メイド喫茶は七組になったの」
……そういうことか、多分文化祭の出し物の案を出して、それを他のクラスと被らないように話し合いに行っていた、ということだろう。
「だからお化け屋敷に決定!」
ん? やっぱりよく分からない。
……まあいいか。
彼女が黒板に『お化け屋敷』と大きく書く。
そしてその隣になんの役割が必要かと箇条書きで書いていく。
書かれていることを確認するにどうやら全員で準備、当日は全員でシフトを組んで回すとのことだ。なるほど、これはなかなか大変そうだ。準備はもちろん手伝うけど、できれば当日参加はしたくなかったな。
そんなことを考えている間にも黒板に文字が足されていく。
どんなお化けを出すか。驚かすギミックはなにか、また、それを操作する人。
どれが楽だろう。いや、彼女と一緒になれないだろうか。もう二学期なのに、クラスメイトの名前を憶えてこなかった自分の愚かしさが嫌になる。
黒板に名前が書かれていく。どこだ、彼女の名前は……。
「あたし受付やりたーい」「えー楽したいだけじゃん」
「受付ってなにやんの?」
男子生徒が彼女に質問する。
「金券を受け取って案内するのが主な仕事ね」
指で顎をトントン叩く仕草に思わず見惚れてしまう。
それにしても一向に名前がわからない。結構人の名前って飛び交っているはずなんだけどな。私が保健室に行く時とか言っていたような気がするし……、まああの時は名前を言っていたとしても聞いていなかったけど。
だんだん役割が決まっていく。二人分空いている場所に運が良ければ一緒になれるはず。まだ書いてなければだけど。
「
不意に彼女が私に投げかけてきた。
一瞬心臓が跳ねるがなんとか落ち着く。平常心。
「どこでも問題ないよ」
「そっか、じゃあ私と同じ場所に入れるね」
「え⁉️」
「ん? もしかして嫌だった」
嫌なはずない。むしろ嬉しい。私は首を振ると答える。
「いや、楽しみだよ」
嬉しいと言ってしまうのだけはなんとか避けることができた。
「それならよかった」
彼女はそう微笑むと、黒板に文字を書く。
――
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