保健室

 保健室のベッドで私は寝転んでいた。

 保健委員が付き添いに来てくれたおかげで、特に理由を話さなくても休ませてくれた。

 これから保健室で寝たいときはついてきてもらおうかな、なんて良くない考えが私の頭に浮かぶ。あの子は真面目そうだからついてきてくれそう。

 でも、さすがにそんなことをするのはダメだ、仮病で逃げたりはするけど人を利用するようなことはしたくないかな。

 考えごとは止めて早く寝よう。なんか、また様子を見に来てくれるらしいし。


 夢を見ないほどの深い眠りだったようだ。

 眠気はすっかり無くなって頭はスッキリ。なんとなく目を動かすと、あの保健委員がいた。そいえばこの子の名前はなんだっけ?

「おはよう、調子はどう?」

 穏やかに微笑んで声をかけてくれる彼女の顔を観察する。

「大丈夫……?」

 綺麗な二重だ、少し顰められた形のいい眉が揃えられた前髪から覗く。整った目鼻と桜色の唇、それらの距離が綺麗に並んでいる。え……。

「……可愛い」

 あ。

 思わず口に出てしまった、だけど彼女は照れるでも引く訳でもなく、ただ更に眉をひそめて。

「大丈夫……よね?」

 とだけ。

「ああ、大丈夫」

 私はゆっくりと身体を起こし、固まった身体をほぐすために軽く動かす。

「スッキリしたよ」

 私がそういうと、彼女はホッと安心したようだった。

「ならよかった、次の授業は戻ってね」

 それだけ言うと保健室から出ていく。

 私は保健室にある時計を確認する。丁度五限と六限の間の休み時間。授業が始まるまであと五分。どうせ次の授業も文化祭関係だ。別に戻らなくても問題は無いと思う。

 ――もし、戻らなかったら彼女はまた来てくれるだろうか。

 そう思ったけど、大丈夫と言った手前、戻らないと仮病だとバレてしまう。仕方なく私は教室へ戻ることにした。

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