第一試練23 京都出発
「明音さん体調は大丈夫ですか?」
「うん、まだちょっと身体がだるいけど少し動くくらいなら大丈夫よ」
「よかったです。でも無理しないでくださいね」
試練開始から26日目。秋灯が当初立てていた予定通り一週間で各自準備を済ませた。
明音の体調は完全には治りきらなかったものの立ったり歩いたりはできるようになっていた。
試練の期限まで今日を入れて残り六日。
明音の体調も心配だが日数が少ないため四国へ向けて出発することを決めた。
明音と伊扇は荷物をまとめ終わり旅館の前で待機しているが、秋灯が一向に来ない。
準備に少し時間がかかると言っていたが、心配になってくる遅さだ。
「すみません、お待たせしました」
旅館とは別の方向から秋灯が出てくる。
大きなベッドを手で押しながら二人に近づく。
「えっと秋灯。一応何をやっているかは聞いていたんだけど・・・これは何?」
「ベッドです。キングサイズの」
「えぇっと・・・・」
明音が珍しく困惑している。
時間解凍を応用した方法で四国へ移動すると伝えていたが、これは予想がつかなかったみたいだ。
「ちょっとシートベルトを取り付けるのに時間がかかってしまいましたけど、大丈夫です。これで行きましょう!」
「・・これに乗っていくの?下にキャスターでも着いてるのかしら?」
10kg以上はあるだろうベッドを軽々押す秋灯。
見ていて違和感がある。
「秋灯さん。ちゃんと明音さんに説明してください」
「すみません。えーとですね、この一週間時間解凍の応用を練習していまして、物から摩擦をなくすことに成功しました。このベッドの四脚の足の部分の摩擦をゼロにしましたので平たい路面を小さい力で進むことができます。つまり四国までこれに乗って行きます!」
この一週間丸々使って時間解凍の応用からベッドの準備まで行った。
秋灯は昨日の遅くまで、というか今朝方まで作業をしていたのでほぼ寝ていない。
眠気を誤魔化すため海外製のエナジードリンクを摂取したら逆にテンションがハイになってしまった。
「ではここで役割を発表します。エンジン担当伊扇!」
「えとえと、急ですね。はい私がやります」
「この一週間伊扇さんには魔力を使うと現れる突風を制御できるよう鍛錬していただきました。伊扇さんをベッドの後端に固定しまして、突風を起こしてもらいそれを動力に進みます。伊扇さん鍛錬の成果はどうですか?」
「た、たぶん大丈夫だと思います!」
「風が強すぎると全員ベッドから投げ出されるのでくれぐれも出力の調整をお願いします。続いてハンドル兼ブレーキ担当秋灯!はい俺です。ハンドルとブレーキを簡易的ではありますが設置しました。数回使用したらツルハシの固定が取れそうですが四国までは保つでしょう!最悪を想定して一つギミックも用意していますが、使われないことを祈ります」
ベッドの両端にブレーキ用のツルハシが取り付けられている。速度を出しすぎると止まるために相当の握力がいるが、あまり凝ったものを取り付ける時間はなかった。
ハンドルについても取り付けたツルハシを地面に接触させ進む方向を設置面の摩擦で無理やり変えるだけのもので気休め程度だ。
「最後に睡眠担当明音!ふかふかのベッドにしたので眠っていてください!」
「私の役割がひどいわね」
明音先輩が渋々答える。
まだ本調子でないことは本人もわかっているため口答えせず了承する。
「試練の期限まで残り6日。俺の予想では3日もかからずつくことができます。最初は伊扇さんの風をならしながら進みます。では本日も頑張りましょう!」
「が、頑張ります!」
「だからそのテンションはなんなのよ」
エナドリの効果はお昼頃まで続いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます