第一試練22 魔力雑談
「そういえば秋灯って魔力使えるの?」
食事中、唐突に明音が聞いてくる。
「いえ、俺は使えませんよ、そんな不思議な力」
「時間解凍とかとんでもないやり方しているのに、秋灯が魔力を使えないってなんか違和感があるのよね」
勘がいいのかこの人は。
魔力に関わらず常識外のこと、いわゆる超能力や奇跡などと呼ばれる事象について秋灯は少し齧ったりしていたのだが、それを明音には隠していた。
身体の強化についても実は短時間であればできるが、効果が弱くすぐに魔力が切れてしまう。
明音には諸々説明する気がないので、魔力に関わることは全てできないと答えていた。
「風穂野。魔力って持っている人と持っていない人がいるの?」
「えっと、生物であれば魔力はあるはずです。そもそも魔力って生命エネルギーみたいなものですからどんな生き物でも生命活動が止まっていなければあるはずで・・ただ、個人差がすごくて。魔術師の家系でないと身体の強化とかには使えないと思います」
「へぇーそうなのね」
「明音先輩。それ以前伊扇さんが説明してくれてましたよ」
「あら、そうだっけ。じゃあついでに、秋灯が時間解凍する時って見えないところの位置もわかるって言っていたけど、魔力?生命エネルギーみたいなものを感じ取っているの?」
「さぁ?俺もどうやって感知しているかわからないですね。ただ、なんか集中したらわかるというか」
秋灯自身時間解凍の際、建物の何を感知しているのかよくわかっていなかった。
少なくとも明音や伊扇が保有している魔力とは別の何かだと思うが。
「えっと、秋灯さん霊感とか超能力って使えたりします?」
唐突に伊扇が聞いてくる。
スピリチュアル系の話は魔術師界でも扱いが難しくなっている。
「いや、そういう類とは縁がありませんでしたけど、どうしてです?」
「いえ、魔術師の中でも魔力以外を感知できる人がいたらしくて。その人が言うには魔力は身体の外側にあってもっと生命の奥にあるもの、霊とか魂とかと呼ばれるような何かを感じ取っているらしくて。その魔術師は霊体の処置が専門の方だったので、もしかしたら秋灯さんも霊感とかあるのかなーと」
「生命の奥、ですか」
魔力と霊や魂は別物らしい。
正直そういう類は全て同じものと考えていた。
自分がこれまで時間解凍のプロセスで見えていないはずの建物の内部まで詳細に判別できたのはこれを感じていたのだろうか。
魔力でさえ一般人は感知することができないが、その魔術師は魔力を外側といっている。もっと奥、霊や魂が存在している場所があり、身体はいくつもの層で構成していると考えれば。
「秋灯ーーーー。おーーーーーい、ねぇ聞こえてないの?」
「最近秋灯さん急に考え込むことが多くて。大声で話しかけないと気づいてくれないみたいです」
「鼻とか摘んでも気づかないかしら」
「えっと、それは流石に気づくと思いますよ」
「一回触ってみましょ。ほら風穂野も」
「いや、えと、私は、、」
明音先輩と伊扇がイタズラを思案している中、秋灯の思考は深みへ落ちていく。
生命の奥、その最奥。本来人が感知できないはずの未知へ。
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小一時間ほど悩み続け、一区切り着いた頃。
秋灯の髪は極端に短いツインテールとほっぺに黒ペンで落書きが施されていた。
「・・・流石に気づけよ俺」
自分の集中力の深さに驚くが、これも時間停止の影響だろうか。
髪の毛を縛っているゴムを無造作に取って周りを確認するが、伊扇の姿はすでになく、明音先輩は敷かれた布団でスヤスヤ眠っている。
怒るに怒れず、ちょっとだけ先輩のほっぺをつねり顔を洗いにいった。
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