第一試練14 京都滞在1日目PM
あれから近くの薬局から風邪薬、熱さまシート、軽い食べ物等を調達してきた。
他にも加湿器や暖房器具、その他もろもろをとってきたかったが家電製品が売られている店舗が遠かったので一旦旅館に戻った。
「白峰さんは大丈夫そうですか?」
「今は寝ているので大丈夫だと思います」
伊扇にも明音が風邪を引いたと説明しておいた。
体温計の温度は38.5度。咳や喉がイガイガすると言っていたのでおそらくただの風邪だと思うが、うつってしまうといけないので部屋に入る際は注意するようにと伝えていた。
「えと、鐘ヶ江さん、その荷物はなんですか?」
「明音先輩用の食料です」
「えとえと、流石にそんなにいらないんじゃないかなーと」
秋灯はスーパーの袋をそれぞれ片手に下げていた。
袋の中にはリンゴやみかんなど果物から、ゼリー飲料、アイス、飲みもの、ネギなどがパンパンに詰まっている。
「いえ、何が効くかわかりません。病人が欲しがりそうなものは極力手の届くところに置いておこうかなと」
「で、でも客室にずっと置いていたら腐っちゃいそうですが」
「後で冷蔵庫と発電機を持ってきます。それまでは保冷剤を近くに置いておきます」
「そ、そうですか。えーと、何か私にできることはありますか?」
「いえ、お気持ちだけで十分です。伊扇さんもお疲れだと思うので休んでください。明音先輩が回復次第すぐに出発しますので」
「わかりました。何かあったらすぐに言ってください」
心残りがあるのかこちらをチラチラ見ながら伊扇が自身の客室へ戻っていく。
言い方が少し冷たかったかなと反省しつつ秋灯は明音がいる部屋へ入る。
朝に確認したときと同様、おとなしく眠ってくれている。
明音の額には熱さまシートが貼られているが、顔の赤みは未だひいていない。
眉間はいつもより険しく表情が苦しそうだ。
「あ、秋灯戻ってきたのね。風穂野にうつしてなかった?」
「大丈夫ですよ。筋肉痛はあるようですが元気そうでした。明音先輩を心配していましたよ」
「そうね、悪いことしちゃったわね。秋灯、もしこの風邪が長引くようなら、私を置いて」
「それはまた明日考えましょう。今は身体を休めることに集中してください。何か食べられそうですか?」
いつもより優しい、というより弱々しい明音先輩に買ってきたゼリー飲料を渡す。
大人しく受け取り食べる姿は違和感しかない.
「私普通のゼリーが良かったわ」
「はいはい、それもありますよ。アイスも買ってますんで食べれたら食べてください」
文句をつけてくる姿を見て安心するのは、普段のこの人に慣れすぎているからかもしれない。
一通り食事を済ませ、また布団へ戻る。
ネギを首に巻こうとしたが拒否されてしまったので一応枕元へ置いておく。
目を瞑ったところまで確認し秋灯は静かに部屋を出ようとする。
「秋灯どこ行くのよ」
「えと、大人しく寝てくれたので冷蔵庫とか調達してこようかなと」
「まだ寝てないわよ私」
「いやでも目を瞑ってましたよね」
「瞑っただけよ、寝ていないわ。冷蔵庫とかそんなの後でいいから、その・・・・・こっち」
布団から出した腕で畳をバシバシ叩く。
そこに行けということだろうか。
「なんですか、別にすぐ戻ってきますよ」
指定された場所に腰を下ろす。
明音は布団を頭まで被っていて顔が見えない.
「いいから・・・・・・・・眠るまで横にいて」
不覚にも可愛いと思ってしまった.見えない顔は多分真っ赤になっているだろう.
いまだ畳の上に投げ出されてる手を握ってしまってもいいのか、明音が眠るまで秋灯は悩み続けた.
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