第一試練13 京都滞在1日目AM
畳特有のい草の匂いで目を覚ました。足の疲れは昨日より幾分マシになった。
温泉に入ってリラックスできたことが大きい。
身体のだるさを若干残しつつ、布団から起き上がる。
まだ瞼が重いが、コーヒーでも淹れようと部屋の隅に置いていたリュックへ近づく。
確かドリップのパックがまだ余っていたはず。
途中白い何かに躓いた。
半開きだった目を開けると足元に布団とその中に人らしき姿。
頭まですっぽり包まれていて顔はわからないが、多分明音先輩だろう。
また、夜に忍び込まれたみたいだ。
伊扇がいる手前、別々の部屋で寝ているが、朝になると忍び込まれている時がある。
以前遭遇した異形が怖いのかそれとも夜一人でいると寂しいのか。
なんにせよこちらが寝た後、気配もなく横にこられるのは流石に驚く。
今日は自分の布団に入りこまれていないだけ、まだましだが。
時計の針は7時を少し過ぎたあたり。
今日の予定では各々自由行動としているが、確か明音先輩は午前中、伊扇と魔力の運用について練習すると言っていた。
一応起こしておくかと声をかける。
「明音先輩、朝ですよー」
返答がない。
「明音先輩、そろそろ起きてください。伊扇さんと練習するんでしょ」
布団を足で強めに揺するが起きてこない。
よほど熟睡しているのか身動き一つ取らない。
「布団剥がしますよー。いいですねー」
以前寝起きをの顔をみられたくないと言っていたので極力見ないよう努めてきたが、これは不可抗力だろう。
被さっていた布団を剥がし中を確認する。
そこには顔が蒼白色で目の下の隈が濃く額には汗が滲んでいる明音先輩がいた。
というか明らかに風邪をひいていた。
「ちょっ!大丈夫ですか?えーと何か冷やすもの。体温計もどこかにあったかな。風邪薬はえぇっと薬局に行って・・・」
「・・・・・あ、秋灯おはよ。なんか今日はやけに寒いわね」
普段とは考えられないほど弱々しい声が返ってくる。
剥がした布団を元に戻し、加えて自分が使っていた布団を重ねがけする。
「明音先輩、たぶんというか確実に風邪です」
「・・・・・・誰が?秋灯?風穂野?」
「明音先輩が、です」
「私が風邪?・・通りで身体が寒いわね。だるさもすごいし。でも昨日まで元気だったのだけど」
「俺もビックリしましたよ。そんなそぶりがなかったので。ただ、今日は絶対安静にしていてください。俺はネギを取ってきます」
「えっとなんでネギ?」
「首に巻くようです。あと熱さまシートと、加湿器とカイロと桶と氷水とタオルと冷たい飲み物と、あぁ風邪薬も必要ですね。あとは、、、」
「ちょっと、落ち着きなさいよ」
「俺は落ち着いています。冷静です。大丈夫です。そんなことより自分の心配をしてください」
「はいはい。あんまり必要のないものは持ってこないでね。よいしょっと」
明音先輩が上半身を起こす。
着ていたシャツが汗で肌に張り付いている。
「起きなくていいですって!寝ていくてください」
「でも服がべとべとして気持ち悪いのよ。着替えのTシャツ取ってきてくれる?隣の部屋の私のリュックに入ってるから」
「分かりました。でも今日は本当大人くしくしていてくださいね」
「はいはい。あぁ秋灯、私ゼリーが食べたいわ。あとアイスも」
背中越しに声をかけてくるが、要求できるほど元気はあるようだ。
一旦隣の部屋からリュックを取ってきた秋灯は再度明音が眠るまで横ををうろうろしていた。もちろん着替えの際は部屋を出ていたが。
明音が体調を崩したことに動揺していた。
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