第13話 友人関係
「ラ、ライオネル様。これはその……」
正直。この時点で私の頭の中は「パニック」そのものだった。でも、それ以上に申し訳なさと後悔が私を襲う。
「……別に怒ってはいないよ。むしろそうする様に仕向けた僕を怒ってくれたっていいくらいだから」
「そんな事……」
――出来るはずがない。
たとえ仕向けられた事だったとしても、それが分かった時点で私も何かしらアクションを起こすべきだったと思ってしまう。
こんな……申し訳ないという気持ちになるくらいなら。
「……やっぱり君は優しく、それでいて控えめだね」
「そんな事は……」
さっきからずっと同じ様な言葉を繰り返している様に思う。でも、事実なのだから仕方ない。
「彼が君を自分の息子の婚約者にと言った理由がよく分かるよ」
「え」
何気なくシュヴァイツ様が発した言葉に驚いて思わず顔を上げる。
「あ、もしかして知らなかったかな?」
「い、いえ……その」
正直、あまりにもシュヴァイツ様がハモンド宰相を普通の友人の様に話しているので少し驚いてしまった。
「僕自身あまり社交の場に出ないからね。でも、国王陛下やハモンド宰相とは年こそ離れていますがかなり仲良くさせてもらっていてね」
シュヴァイツ様の年齢を考えれば確かに国王陛下より王子の方が年は近い。だからこその「年こそ離れている」という発言だろう。
「――今回の件も彼らからの依頼でしたし」
「……」
そこで私は腑に落ちた。いや、最初から何となくそう思っていたけれど、やはり本人からキチンと説明を聞くのと聞かないのとでは大きく違う。
「正直。僕は『植物に詳しい』と言っても、それはあくまで成長させる方法などの育成に関しての話。現に庭師が今まで素手で作業をしていても特に何も思いませんでしたし」
「そ、それは……」
ちゃんとしておいた方が良いと思う。
「しかし、まさか植物の中でも触ること自体危ないモノがあったとは……」
「結構そういったモノはあります。今回も……」
そういった部類に入る。
「おや、何か分かったのかい?」
「え、あ。はい」
そう答えると、シュヴァイツ様は突然私の肩をガシッと掴んで「本当に?」と私の目をジッと見つめる。
「え。あ、あのライオネル様?」
「あ、ああゴメン。つい……」
あまりにも突然だったから、ついドキッとしてしまう。
「い、いえ……」
――顔が熱いのはきっとこの部屋が暑いからだ。きっとそうだ。そうに違いない。
「……僕としてはもう少し意識してくれていいと思うけどね?」
「い、いえ。私はあくまで『結婚式』が終わるまでは婚約者という立ち位置という事ですので」
頬を両手で押さえながら遠慮がちに答えると、シュヴァイツ様は「ああ、それか」とため息をついて「なんで僕はそんな事を言ってしまったんだろう」とうなだれた。
「……」
本人曰く「大切にしたい」という気持ちや「緊張から」そう言ってしまったらしい。
だけど、残念ながら私は約束はきちんと守る人間だ。
「ですので、ちゃんと守らせて頂きます」
「……はぁ、分かったよ。だって僕はそういうところも含めて君を好きになったのだから」
なんてこちらが恥ずかしくなってしまうような事をサラリと言ってニッコリと笑い、逆に私は思わず固まってしまった。
なんで……私の方が照れているのだろうか。
当の本人は全然自分が恥ずかしい事を言っている自覚がないのか、キョトンとしている。
本当に……ここに来てから楽しいだけでなく、今までに体験した事がない事ばかり起きるから……大変である――。
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