第22話
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種族グランドデビルコックローチ レベル2 所持SP15
名前:なし
称号:『容赦なき者』
HP123/123 MP62/75
筋力:76
耐久:59
俊敏:138
知力:58
魔力:73
器用:49
スキル:『しぶとい』『HP自動回復』『逃走2』『パワーファング5』『石化2』『鑑定2』『魔導3』『重力魔法3』『詠唱1』『ふんばる』
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HPの回復が終わったな。
痛みも消えたし活動再開と行くか。
死闘の末のダメージ(自爆)を負っていたさっきと比べ、今の僕はとても機嫌がいいんだ。
なんてったってさっき前世でも食用として有名だった鶏肉を食べることが出来たんだからな。
いやー、まじで美味かったよ。
そのおかげで今ならなんだって出来そうだ。
この調子でさっさと次の魔物が出るまで登っちゃおう。
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かなりの時間が経ち、既に日が沈み切った頃。
・・・
ここ鹿と鳥しかいねえじゃねえか。
どうなってんだこりゃ。
着いちゃったよ山頂。
ここまで来るのに10体くらいのエッジディアを倒して2レベルは上がったけれど、結局いいレベル上げになりそうなのはいなかったな。
まあ仕方がない、それはいいとして山頂になんか大木が生えてるんだよね。
もう少しで山頂、というところなんだけど山頂に生えている大木があまりにも気になりすぎる。
美しくも見えるし怪しくも見える。
いやその両方だな。
美しいからこそなにか怪しい雰囲気を醸し出している。
近づいてみないと分かるものも分からない。
行くしかないか。
僕は周りに敵が居ないかを確認しながら、山頂へと歩んでいく。
これで登頂、か。
本当にそばで見ると圧巻だな。
こちらを呑み込むんじゃないかというレベルの存在感。
生気に満ちている美しい緑の葉。
どこをとっても素晴らしい木だ。
...だが。
実際に近くに来て予想は確信へと変わった。
僕の全細胞が告げている。
こいつは普通の木じゃない。
それは木にしては美しすぎるという類の話ではない、こいつは...化け物だ。
《鑑定》発動。
《ディアブリテイン》
ディアブリテイン、明らかにただの植物の名前には見えない。
近くに来て分かるこの膨大な魔力。
僕だってこの世界に来て何体もの敵と戦ってきた。
それなりに相手の魔力がどのくらいなのかもやんわりとわかってきたし、相手の力量も何となく分かる。
そしてこいつからはあの犬と虎と同じレベルの力を感じる。
犬、虎と来てなぜ木なのか、そもそも果たして目の前に見える木の姿が本来の姿なのか、分からないことはいくつもある。
だがひとつ、分かることもある。
こいつを倒したら僕は確実に強くなれる。
それだけは間違いない。
目の前の存在の力は膨大だ。
ただの木にしか見えない、それなのに正面からぶつかりあったら間違いなく僕は死ぬ。
僕は格下で、目の前の木が格上。
だがそれでも、
僕は強くなりたい。
だから戦う。
もちろん僕だって命が1番大切だ。
だけど...
ここで逃げてたらずっと前には進めない。
もしこいつが絶対に倒せないような相手なら僕も逃げる。
だが今の僕なら犬や虎、そして目の前の木に対してだって全く勝てる可能性がないという訳ではないはず。
以前より間違いなく力の差は埋まってきている。
例え地力で劣っていたとしても、勝つ方法はきっとある。
だから僕は挑もう。
そして今こそ貯めてきたSPの使い所だ。
木に対して有効そうな攻撃スキル。
そんなもの火しかなかろう。
僕は迷わずひとつのスキルを選択する。
《5SPを使用して、スキル『炎魔法1』を獲得しますか?》
もちろんだ。
《スキル『炎魔法1』を獲得しました。》
よし。
では、戦いの狼煙を上げようか。
僕は初めて使う魔法の詠唱を一切の躊躇なしで唱え始める。
「『それは燃え』『それは鋭く』『それは全てを照らす
』」
これは前世で読んだ異世界ものの物語でもよく出てきていた、最も代表的と言っても過言では無い炎の魔法。
「『そしてそれは一閃の矢なり』」
「『
初歩中の初歩の魔法。
だが『魔導』を持つ僕が、『詠唱』を使ってまで発動したとなれば話は別だ。
それは自分の体の何倍もの大きさの矢を形作っていく。
そして、
放たれた。
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それは敵に飢えていた。
それはある場所に生まれて以来、その付近の生物をほとんど狩り尽くした。
自分が強くなっていく感覚に強い高揚感を感じ、とにかく目につく生物と戦っていった。
だがある日、それと戦う者はいなくなった。
自分が強くなりすぎたため、もう自分と同じレベルで戦うことが出来るものはおらず、それの生息域からはそれの眷属以外の魔物が消え去っていた。
他の生物など、空を飛ぶことの出来る鳥がそこが高い場所という理由だけで住み着いている以外に何もいない。
それゆえにそれは退屈し、その場所の中でも最も高い頂点で眠りについた。
それも姿を変えて。
姿を変えることによって、食を必要としなくなったそれはずっと眠り続ける。
しかし、ある時謎の温かさと僅かな痛みを感じる。
一体どれだけの時間が経ったかのかは分からないが、今までそのようなことなど一度も無かった。
最初は気の所為かとも思ったが2度目の感覚が来た時、目覚めることを決意した。
そしてそれははるか昔からずっとなっていなかった、本来の姿へと戻っていく。
そしてそれが見たのは1匹の虫。
小さく、明らかに弱そうな風貌だ。
しかし、それはその虫にはその体に見合わない大きな力があるというのを一目で見抜いた。
星の輝く夜空の下、山の頂点でそれは笑う。
今夜は久しぶりに楽しくなりそうだ。
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