第19話

『重力魔法』!

『パワーファング』!


よし。

これで今日の朝飯もゲットだ。

今までの朝ごはんはネズミの肉だったが今日からはウサギ肉にへとランクアップしている。

朝ごはんは毎日のエネルギーの源。

それが良くなったのは素晴らしいことだ。


むしゃむしゃ。

うん、美味い。


さて、今日も森の探索へ行きますか。


といってもどの方角へ行くべきか...

まず元々いた茂みの方向は無いな。

そもそも行く理由が全くない。

もうひとつ山がある方向もいいかな。

とりあえずはこの森を調べたい。

となると残ったのは今の僕から見て前か左か。

どちらでもいいけどここは前の方向に進もうかな。


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あれからしばらくたったがこれといったことは特にないな...


道中初めて見た小さい熊の魔物もいたけど拳闘熊と比べると全然強くはなかった。

名前は《リトルベア》だったな。

リトルと付いてるくらいだし子供だったのか?

でも家族がいたとかではなかったし単純に種族的に小さいのかもな。

他に見たのは今まで戦ってきた魔物だったので特に問題もなくここまでやってきた訳だが...


この辺り何かおかしいんだよな。

さっきから魔物を全くと言っていいほど見ない。

ここまで来る時にも魔物はそれなりに見たし、ここまで居ないというの少々変だ。

ここに魔物が住み着かない理由が何かあるのか?

魔物を寄せ付けないような何か、ね...


・・・まて。

何かいる。


僕はこの先に大きな力を持った何かがいることを察知し立ち止まる。


ここに他の魔物が居ない原因。

それが間違いなくこの先にいる。


まだ直接見た訳でもない。

それなのにその存在が僕よりも遥かに格上であることが分かる。


ゴクリ


僕は勇気を振り絞り前へと進む。


その先にいたのは


大きな虎だった。

虎は明らかにヤバそうなオーラを漂わしながらも眠りについていた。

無防備、それなのに絶対に触れてはいけない。

金色に輝いているその体からは圧倒的な魔力が溢れ出ていてその絶対的な力を肌で感じる。


「...っ」


僕は相手の姿を確認したら一目散に来た道をダッシュで戻る。


あれは無理だ。

今の僕が太刀打ちできる相手ではない。

今の状態であれと戦いに行くというのは死にたいと言うのと同義だ。

あの圧倒的な力。

自分との格の差。

あれだけの力を感じたのは川の付近で出会ったあのデカイ犬ぶりだ。

僕が今まで出会ってきた魔物の中で唯一倒してない。

否、挑戦することさえできていない魔物。

そのデカイ犬と同じくらいの強さをあの虎からは感じた。


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はあ。

また戦いに挑むことすら出来ず逃げることになってしまった。

別に逃げたことを後悔している訳では無い。

死なないことが1番大切に決まっている。


だが。

圧倒的な力を見て、無理だと諦める。

そんな展開、全くもって面白くない。


ああ。

強くなりたい。

今の僕にとって、強さとは全てだ。

強さがないと生きられない環境で、強さがないと前に進むこともできない。

この世界がどういう世界なのか、知ることさえ叶わない。


何より。

強くなりたい。

その気持ちが僕にはある。


何故?

そう聞かれても理由なんてものは無い。

ただ、

強くありたい。

これは僕の持つ感情だ。


そういえば転生してから、大した目標も持たず、今まで生きることのためだけに行動してた節があるから、いまいち自分が何をしたいかを考えたことがなかったな。


ただ生物として。

生きるために行動する。

それだけじゃつまらない。

面白い人生、いやゴキブリ生を僕は歩んでいきたい。


ならばなにか目標を持つことも大切だろう。


この世界での僕の目標。

これからも増えていくかもしれない。

けれども第1の目標、

それは「強者」にしよう。

単純明快、強くなること。

それが目標だ。


今ここで宣言しよう。

僕は必ずこの世界で「強者」となってみせる。

理由など今はいらない。

ただ強くなりたい。

その感情に正直になり、僕は力を欲する。

そのために努力を重ねていくことをここに誓う。

全ては己の為に。


よし。

ここからは今までとは違う。


僕は僕の為に、力が欲しいから敵を倒す。

やらなきゃじゃない、やりたいからやる。


ここからが僕の新たな物語だ。


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《レベルが上がりました。》


33体目。

もうそろそろ数えるのもめんどくさくなってきたな。

だがまだまだ全然足りない。

否、いつまでたってもゴールなんてない。

満ち足りることなどない。

僕はただ純粋に強さを求める。


ガサッ


あっちに34体目がいるな。

《ヴィガーボア》

昨日拳闘熊と戦っていたやつだな。

なかなか強そうだったし丁度いい。

僕の糧になってもらおう。


物音を立てないようこっそりと移動し、

僕は木の陰から奇襲をかける。


『パワーファング』!!!


僕の攻撃は狙い通りヴィガーボアの首に命中するが倒しきれない。


流石に一発では無理か。

だが奴はいきなりの攻撃にパニック状態。

冷静になってしまう前にさっさと仕留めてしまおう。


『パワーファング』!!!


もう1発!


『パワーファング』!!!


3発目の『パワーファング』を喰らったところでヴィガーボアは自分に何がおこったのかも理解出来ないまま息絶えた。


《スキル『パワーファング3』のレベルが上がり、『パワーファング4』になりました。》


これだけ使っていれば、か。

メインウエポンである『パワーファング』のレベルが上がってくれたのはありがたいな。

せっかくだし試し斬りならぬ試し噛みをしてみたいところだがもう夜か...


まだまだ狩りたりないところだがそろそろ体も疲れてきた。

健康でないと強くなれるもんも強くなれない。

今日はもう寝るとするか。


いつものように寝るための穴を掘り、その中へと入る。


今日はこの世界に来てから初めて本当の自分の意思で行動できた気がするな。

自分自信で面白いと思えるように。

その方が僕らしい。

明日からも頑張っていこう。






















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