第18話
さあ、早速『重力魔法』を...
あれ?
そういえば僕声無くね?
声出せないのに『詠唱』スキルって使えるのか?
いやいやいやいや、きっと使える、そのはずだ。
こんな状況だけど、前世で新しく購入した充電器が自分の携帯に対応したやつじゃなくて涙しながら違うのを買った悲しい過去を思い出してきた。
あれは最悪だった。
僕はあの日から通販で買い物をする時には指差し確認を忘れないようにしてたのに...
まさか転生して再度同じミスを繰り返すなんて...
一生購入間違いをしないという誓いだけじゃ足りなかった。
せめてニ生分は誓っておくべきだった。
だが今回は違うはず...!
今までだってスキルをそれを使おうと念じるだけで使う事ができた。
なら今回も...!
スキル『詠唱』発動!
スキルを発動するよう念じると、僕の周りが光りだし、感覚で自分が何をすればいいか理解することが出来た。
おお!
良かった、発動してくれたみたいだ。
とりあえず分かったのは別に声に出して詠唱する必要は無いらしい。
心の中でこれだと思ったことを言う、それだけでスキル自体は発動するっぽい。
傍から見たら無詠唱で強化された魔法を使う天才的ゴキブリに見えるのだろうか。
ただ実際は詠唱を口に出すことさえ出来ず、自分の心の中で厨二臭いセリフを誰にも聞こえないのに叫ぶただの悲しいやつだ。
なかなかに虚しい。
だがそんな事は関係ない!
使えるものは使う。
それが僕のスタイルだ。
未だに勢いが収まらない拳闘熊のパンチを避けながら僕は心の中で言葉を紡ぐ。
「『我が力は星の力』『存在を理解することすら出来ない大いなる力』『だが今汝はその身をもって知ることになろう』」
「『
僕の魔法が発動すると、拳闘熊は突如何かに押し潰されるように地面へと倒れ始め、四足歩行へと姿勢を変える。
四足歩行へと姿勢を変えた拳闘熊は自分に何かをしたのであろう目の前のゴキブリへと突進する。
これでもまだ動けるか。
だが、...遅い。
その程度の速度ならば攻撃を避け、反撃を喰らわせることなど容易い。
『パワーファング』!!
ここで初めて反撃に出た僕の攻撃を、体が思うように動かせない拳闘熊は避けられない。
「ぐおおおおおおおおおおおぉぉぉおお!!!」
元々ボロボロだった身体にトドメを刺された拳闘熊は周囲を震わせる程の悲鳴を上げ、倒れる。
《スキル『重力魔法1』のレベルが上がり、『重力魔法2』になりました。》
《スキル『魔導1』のレベルが上がり、『魔導2』になりました。》
《レベルが上がりました。》
《レベルが上がりました。》
拳闘熊。
いい戦いだった。
いやー何とかなったな。
トドメを刺すだけだと思ってたのに急に暴れだした時はなかなかヒヤッとしたよ。
まさか万全じゃない状態の筈なのにあそこまで強いだなんて。
でもそのおかげで『詠唱』のスキルを使えるようになったし、『重力魔法』と『魔導』のスキルも上がった。
大変だったがその分収穫もあったというものだ。
特に『詠唱』のスキルはかなり有用だ。
少々セリフが厨二臭くて恥ずかしいかもしれないがそれを差し引いても莫大なお釣りが出てくる効果をしている。
『詠唱』を使用することで使える『
他にも色々思うところはあるけれどここは一旦ステータス確認だな。
「ステータス、オープン。」
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種族ランドデビルコックローチ レベル5 所持SP2
名前:なし
称号:『容赦なき者』
HP72/78 MP6/37
筋力:41
耐久:33
俊敏:83
知力:26
魔力:33
器用:24
スキル:『しぶとい』『HP自動回復』『逃走2』『パワーファング3』『石化2』『鑑定2』『魔導2』『重力魔法2』『詠唱1』
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MPが残り6しかない...
これ増えた分が丁度6だからレベルが上がるまでMPが0だったっていうことだよね。
MPが0になったらぶっ倒れるとかそういうことがなくて良かったな。
もしそうだったら今頃クマと一緒に仲良く地面に寝っ転がってるところだったわ。
振り返ると転生したての時からかなり成長したな。
魔力なんて最初1しか数値がなかったのに。
今では33と様になってきたものだ。
あー、にしても今日は疲れたな。
初めての森探索、なかなか危険なものになったが収穫も大きかった。
一角兎との遭遇。鑑定のレベルアップ。滅茶苦茶美味しかった一角兎の肉に拳闘熊との死闘。
他にも『詠唱』の獲得など色々なことがあった日になった。
日が暮れてきたしMPも6しか残って無い。
丁度目の前には倒したばかりのクマの体が転がっている。
今日はもう休息にしよう。
1日の終わりを採れたてホヤホヤの熊肉で占める、
なかなかいいじゃないか。
僕は文化的なゴキブリだからね。
ちゃんと手を合わせてのいただきますは忘れない。
今日1日よく頑張りました。
乾杯。
いやたまらねえなこりゃ。
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