第17話
たった一発のパンチ。
たったそれだけで周囲の風が暴走し僕に襲いかかる。
っ...... !
速く、そして重い。
もう死にかけだというのに。
いきなり狂ったように暴れ出すとは思わなかった。
根性だけで戦っているのか、はたまたなにかのスキルか?
いずれにせよ奴はまだまだ戦えるということだ。
今はそれだけわかっていれば充分。
狂った熊は僕に向かって幾度もの攻撃を繰り出してくる。
こっち、こっちっ、今度は木の陰!
僕は状況を整理する時間を作るためにも必死に避ける。
って、あいつ怪力すぎるだろ!?
盾にした木々は1本残らずぶっ倒されてやがる!
さっきイノシシと戦っていた時よりもパワーアップしているな。
どうやって倒そうか。
とりあえず一旦『重力魔法』を掛けてみよう。
効いてくれたら儲けもんだ。
『重力魔法』発動!
『重力魔法』をかけられた拳闘熊はほんの少し動きが遅くなったように見えるが、たったそれだけ。
またしても圧倒的な威力のパンチが僕を襲う。
ですよねー!?
まあ効かないだろうなー、とは思ってたけど実際に全然効いてないのを見ると結構ショックだよ。
でもね。
普通なら自分の今ある1番の必殺技が通用しなくて絶望するところなんだけれど今回は違う。
あと一発、もしくは2発攻撃を当てられたら間違えなく奴は死ぬ。
ならばやりようはある。
それに今の拳闘熊は先程イノシシの弱点を狙って攻撃を放っていた時と比べ、攻撃が少し雑だ。
そのおかげで圧倒的なパワーとスピードを持つ奴のパンチを何とか躱し続けることが出来ている。
正気を失い本能の儘に放ってきている攻撃に当たるほど僕だって弱くない。
自分の武器である高い俊敏性で上手く相手を撹乱し、どこかで隙を突きたいところだ。
ただ...
さっきから頑張ってはいるのだけど奴の動きが速すぎて隙を突くことができないんだよな。
単純な馬力でこちらの撹乱を突破してくる。
無茶をして無理やり隙を突こうとした日にはちょっと掠った攻撃で僕の体が爆散してもおかしくない。
......これでは千日手だな。
相手の攻撃が僕に当たることはないだろうけど、逆に僕が相手に攻撃を与えることも出来ない。
ずっと戦い続けたらいずれ相手のMPが尽きて自滅してくれる可能性もあるけども、そもそもあの狂ったような状態がMPの消費によるものという確証もない。
一旦自分のMPの残量を確認しておこうか。
「ステータス、オープン。」
------------------------
種族ランドデビルコックローチ レベル3 所持SP2
名前:なし
称号:『容赦なき者』
HP67/70 MP18/31
筋力:35
耐久:29
俊敏:73
知力:22
魔力:27
器用:20
スキル:『しぶとい』『HP自動回復』『逃走2』『パワーファング3』『石化2』『鑑定2』『魔導1』『重力魔法1』
------------------------
残りMPは18か...
まだ半分以上は残っているが無駄遣いはできないな。
うーん...どうしよう。
このままじゃ攻撃出来ないから何とか相手の動きを抑えたいのだが...
『石化』を使ってみるか?
ダメだ。
結局『重力魔法』の二の舞になるだけだろう。
できるだけMPは節約しておきたい。
でも『重力魔法』も全く効いてないという様子ではなかったんだよな。
『パワーファング』分を残した全MPをつぎ込めば可能性はあるか?
だがそれはあまりにリスクが高い。
失敗した時にMP無しで戦わなきゃいけなくなってしまう。
もうひとつ敢えて攻撃を受け、『しぶとい』を発動させることで自分の動きを速くして奴の隙を突くっていう手もあるんだけど...
ブオンッ
当たっていなくても分かるあの威力。
一発でも当たったら即KOになってもおかしくない。
一応1SPでとることが出来る『根性』っていうスキルが攻撃を耐える系のスキルだとは思うんだけど...
最終手段だな。
それを行うにはかなりの勇気がいる。
うーん。
やっぱり『重力魔法』しかないか?
それでもいいのだけれど、何かもう一押し欲しいんだよな...
何かスキルに...あったな。
確か2SP取れるスキルに『詠唱』というのがあったはず。
あれの効果は魔法の強化に関するものだろう。
えっと、これか。
------------------------
『詠唱』
魔法を使う際、それぞれに合った詠唱を行うことで魔法の威力が上がるようになる。
------------------------
予想通り。
まあこれしかないだろうという効果だ。
これで威力を増強した『重力魔法』ならあいつにも有効なはず。
もしそれでも攻撃を当てるのが難しかったとしても動きの遅くなった相手からならば逃げられる。
よし。
僕は『詠唱』の文字を選択する。
《2SPを使用して、スキル『詠唱』を獲得しますか?》
ああ。
《スキル『詠唱』を獲得しました。》
これで準備は整った。
さあ、反撃といこう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます