第2話

ん...

私は誰、ここはどこ。じゃなくて。

あの後一体どうなったのだろうか。とりあえず意識が復活したのは良かった。一旦周りを確認しよう。


目を開くと見えたのは、


「森...?」


いやでかい森だ。一体どういう状況だ?

というか視点が異様の低い。というかそれだけじゃなくてなんか体の感覚が全然違うぞ。なんか足が増えてる気がするんだけど。さすがに気の所為だと信じたいが体の違和感は少なくとも真実だ。


とりあえず自分の今置かれている状況について考察、整理しよう。


1つ、よくわからんがでかい森にいる。

2つ、視点の低さと体の違和感。

3つ、なんか見るからにヤバいのが見える。強そうなでかい犬だ。


この周りの状況からしていま自分の身に起こっていることとして有り得そうなのは2つ。


まずはこれが夢だという線。だけど夢なら正直自分の頭が回りすぎている気がする。夢ならもっとあやふやにしか考えられないはずだ。


そしてもうひとつが


「...転生。」


多分...こっちな気がする。なぜとかどうやってとかは全く知らんがおそらくそうだ。

そして確実に人間じゃねえ。

人間の時になかった部位を動かせるもん。気の所為だと思いたかったが足が増えてるのは確定っぽい。


ひとまず自分の姿を確認したい。幸いにしてちょっと移動するだけで水溜まりがある。そこで自分の姿を見てみよう。


僕は謎の違和感のあるからだで水溜まりまで移動し自分の姿を確認する。


「...うわ...。」


これはあれだ。数多くの人間を泣かせ、いくら殺してもゾンビように世界からはいなくならないあれだ。

というかこればっかしは1回叫びたい。



「なんでゴキブリなんだよおおおおおおーーー!!!」


はい。紛うことなきゴキブリです。

せっかくファンタジーみたいな世界に転生したと思ったらゴキブリて...。

転生したくないランキングとかあったら間違えなく上位だろ。というかなんなら嫌すぎて思考の範疇外で選択肢にすらない可能性だって有り得るわ。


まあ新しい人生、ならぬゴキブリ生がいざ始まらんということでまずはこの体になれることから始めようと思う。なんか周りにでかい犬も見えてたし食われたらかなわんからね。


まず移動。


カサカサッ


うん、問題なし。違和感こそあるもののさすがは自分の体。何となくで思い通りに動かすことはできる。


次に聴覚なのだがこれは人間の頃より耳がいいな。一体どこに耳がついているのかは知らんが聞こえるからよし。


発声は。


「・・・。」


まあ無理です。そりゃそうだ。口ないもんな。あ、ちなみにさっき叫んでたのは心の中でだからね。


次は飲食ね。

ゴクッ

目の前の水溜まりの水は問題なく飲むことが出来る。

飯がないと生きていけないだろうし当然か。


体の動作確認はこれくらいにして、続いてここが異世界だということを前提とした検証をおこなっていこう。


といってもやることなんてひとつに決まっている。


さあ、皆さんお待ちかね。せーので元気よく言いましょう。


「ステータス、オープン!」


決まったぜ。

ッじゃなくてなにか目の前になにか透明なホログラムみたいなのが浮かんでいる。

えーと、なになに。


種族ランドコックローチ レベル1 所持SP1

名前:なし

HP20/20 MP5/5

筋力:3

耐久:4

俊敏:26

知力:2

魔力:1

器用:3

スキル:『しぶとい』『HP自動回復』


種族はランドコックローチ。ランドが地面、コックローチがゴキブリだから、つまり陸のゴキブリってことかな?

生まれたてだから当然レベル1でステータスはどうなんだ?俊敏が結構はやいしある程度なら襲われても逃げることが可能かも。

そしてスキル『しぶとい』て。これは果たして有用なのか。『HP自動回復』の方はわかりやすいし、有用感でてるけど『しぶとい』に関しては死ににくい的なことだとは思うけどいまいちわからん。


なんなんだよおまえい。

ブオンッ


あれなんか画面が切り替わったぞ。


『しぶとい』:死が近くなった時に耐久と俊敏が上昇する。


結構有用そうだな。どれだけ上がるかはわからんがいかにも強くなさそうなこのステータスなら逃げやすくなるようなステータスは役に立つだろう。


最後にSPなんだけどこれはステータスの上昇、もしくはスキルの獲得に使えるらしい。SPの欄を触ると何に使うか選択肢が出てくる。まずステータスに振ったらどうなるのか。これはSP1につき10いずれかの数値を増やせるらしい。1振るだけでこれだけ増えるなら今の状態だと、魔力に振ったら数値が11倍なんだけど。(1という貧弱なステータスのせいだけど)

スキルの獲得については、それぞれで必要SPが違うっぽい。火、水、風など魔法系のスキルがあるみたいなのだがそれは5SPも必要らしい。高いよー。

まあ取れないスキルなんて今は見てもしょうがないから1SPで取れるスキルを見てみよう。

えーとなになに、『観察1』『強打1』『根性1』『掃除1』『威嚇1』etc...

なるほどねえ。まあ軽いSPってこともあってヤバそうなスキルはないね。あとスキル名の最後に1って書いてあるからスキルも成長するっぽいな。


さて、SPの使い方がわかったところで一体何に使おうか。最初は出来れば有用そうなスキルを取りたいんだけど。

んー、今持っているスキルと併せてこの『逃走1』っていうスキルがいいかもしれない。この森には僕より強い生き物がうじゃうじゃといるみたいだし逃げる力はあって損ない。最初に取るスキルが逃走ってちょっとダサいけどそんなこと知ったこっちゃねえ。

生きていることが1番大事だ。いくらダサいと言われようと僕は自分の身の保身をするぞ。


ということでぽちっとなー。


《1SPを使用してスキル『逃走1』を獲得しますか?》


おうよ。


《スキル『逃走1』を獲得しました。》


『逃走1』げっとだぜ。


よし、逃げる準備もできたしこの森の探索でも行きますかー!


待ってろよ未知の世界!




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