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 俺はヒトノシダに火を放った。二度と植えられないように、その種にもだ。


「ナスカ!」


 燃え上がった炎を見つめていると、事態を察した上官が、こちらへと駆け寄ってきた。


「…ナスカ。自分が何をしたのかわかっているのか」


「…はい」


「…そうか。なら、この意味もわかるな」


 上官が俺に向けて銃を構える。


「上官。外の世界で、なぜ反乱が起こるのか、なぜ戦争が起こるのか、少しわかった気がします…」


「私もだよ。残念だ、ナスカ……」


 バンッ!!


 銃声が鳴り響き、銃口から発射された弾丸が、俺の胸部を貫く。撃たれた衝撃と共に、少し遅れて激しい痛みが俺の感覚を支配した。


 立っていられなくなった俺は、その場に倒れ込む。視界がかすみ、痛みも徐々に薄れ、地面の冷たさだけを肌が微かに感じている。


 もうすぐ死ぬ。

 意識が遠のき、靄が掛かったような思考の中で、俺はそう思った。


 死にそうになったら、走馬灯が見えると言われているが、全く見える気配はなかった。どうやら俺の人生は、そんなものが見えるほど濃くはなかったらしい。

 俺はただの薄暗い視界の中で、自分の選択を振り返り始めた。


 ……この選択が正しかったのか、俺にはわからない。

 おそらくは間違っている可能性の方がずっと高いだろう。

 もしかしたら、外の世界で起こっているクーデターや戦争は、俺みたいな奴のせいで起こっているのかもしれない。


 子供達の犠牲を見て見ぬふりするのも、子供達を助けようと、この国の平和を壊すのも、どちらも悪だ。


 だが、後悔はしていない。

 それはきっと、何かを裏切ることになるから。

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