第2話 偽王女と王女と陛下

 あれから1週間が経った。

私はベッドで療養している。


 「おはようございます。お姉様。」


 ガチャっと扉を開けるクラウディアことディア(愛称)。

今日も歳不相応な分厚い本を持って私の部屋に入ってくる。


 「おはようございます。クラウディア様。」


 私がそう返すとクラウディアは悲しそうに私をみる。


 (そんな顔しないで。私はもう王族じゃなければ。あなたのお姉様でも家族でもないのよ。)


 そう。王族どころか貴族ですらない私はどちらにしろここを追い出される。

私にこの国で居場所なない……。

いやあるな。

地下牢っていう立派な部屋が……。


 「お姉様はなんでいつも悲しい顔をされてるのですか……?。」

 「そう見える……?。」

 「見えます。」


 そう見えちゃうのか……。

ダメだな私……。

クラウディアに心配されるようじゃこの先の生活も難しいだろうな。


 トントントン。


 「ディア。フィーア。入ってもいいか?。」


 陛下の声だ。


 「大丈夫です。陛下。」

 「入ってどうぞ。お父様。」


 ガチャっと扉が開く。

細身だががっしりした体格の大柄の男性。

白い衣装が王族のプレッシャーをより効果的に周りに示している。

《ガリア=ラスティ=ノーファイド》。

 この国の王にして。

私の育ての親だったお人だ。


 それからクラウディアが急いで椅子を私の近くに座れるように置いて、陛下をそちらに座らせた。

相変わらず手際がいい。


 「フィーア……。あれから体調の方は大丈夫か……?。」


 まだ私を心配してくれている。

もうそんな必要ないのに。


 「大丈夫ですよ。陛下。あと少しすれば歩けるようになりますから。」

 「そうか……。そうか。」


 嬉しそうな顔。けれど哀しくもある。

なんでそんな顔をするのやら。


 「もし良かったら。完全に回復したらでいい。フィーア。ディア。私とセラで今度湖に―。」

 「大丈夫です。その時には私はここを出て行きますから。陛下。」


 私のその言葉で辺りは静まり返った。

何を気に病む必要があるのだろうか。

私は特に何もおかしなところは言ってないはずだ。


 「フィーア……。」

 「どうしてそういうことをいうのですか。お姉様。」

 「クラウディア様……。陛下……。」


 わかっているのでしょ。

私がここにいてはいけないこと。

私はここに、この国にいるべきではないの。


 「嬉しいお誘いですけど。私は王族の血も流れてなければ、養子にするほどの神聖な魔法属性を持ってません。」


 そう私の魔法は闇属性。

何度もその力に振り回されてきた。

自分にも、他人にも、周りの意識にも。


 「ましては王族の子供を恣意的取り間違えた侍女の娘で平民です。」


 だからなんでも私のせいに繋がる。

必要悪としてこの国に残り続ける。


 「ここまで世話になってるのも正直ありがたいのですが。されど私とて王族の教育は受けてます。ですから、私がどういう立場いるのかわかった上でそう言っているのです。」


 だからもういいの。

記憶を消して平民としてここを追い出していいの。

そうすれば少なくとも平和でいられるのだから。


 「そうか。それがお前の選択か。」

 「っ……。」


 言葉にプレッシャーが上乗せされる。

これが王の言葉。

だから私は怯えるの……。


 「王族としてふさわしい資質があればいいのだな。」

 「えぇ。そうですけど。」


 何を言っているの。陛下は。

今更そんなこと言ったって私にそんな力はないの。

むしろ追い出す絶対的根拠になるだけよ。


 「歩けるようになったらお前を大聖堂に連れていく。それからお前の処遇を決める。それでもいいだろう。」

 「えぇ。問題ないわ。」


 どうせ結果は決まっているのだから。

まあ。期待はしないでおこう。


 そして数週間後。私はあの忌まわしい大聖堂に行くことになった。

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