第7話 自分側か相手側か

▲ウチとソト

 敬語の基本は、「自分側(ウチ)」と「相手側(ソト)」との相対関係で決まります。

 たとえば「会社内」で部長の佐藤さんを呼ぶときは「佐藤部長」ですし、その人が来ることを「いらっしゃる」と尊敬語で表現します。佐藤さんはソトの関係です。

 しかし「会社外」で同じ人物を呼ぶときは単に「佐藤」または「部長の佐藤」ですし、その人が来ることを「参る」と謙譲語IIで表現します。佐藤さんはウチの関係です。

 ですが「佐藤さんの家族」と話しているときは「佐藤部長」です。家族を相手にすると佐藤さんはソトの関係です。


 家族についても同様です。いつもは面と向かって「父さん」「親父」「パパ」「ダディ」などと呼んでいても、家族でない人にその人のことを話すときは「父」です。

 また自分のことを「僕」「おれ」「あたし」と称していても、改まった場では「わたし」さらに「わたくし」とします。




▲自分がするのか、相手がするのか

 店員がレジでお客様に、

(1)雑誌とアイスは袋を別にいたしましょうか。

(2)雑誌とアイスは袋を別になさいましょうか。

 のどちらで聞けばよいのでしょうか。

 この場合店員が袋に入れているのですから謙譲語IIの「いたしましょうか」が正しいです。


 次に店員がお客様からのオーダーの確認で、

(3)セットドリンクはコーヒーと紅茶、どちらにいたしますか。

(4)セットドリンクはコーヒーと紅茶、どちらになさいますか。

 のどちらが聞けばよいのでしょうか。

 この場合、どちらを選ぶかは客側なのですから尊敬語の「なさいますか」が正しいです。


 店頭の看板で、

(5)只今の時間、すぐにご案内できます。

(6)すべての商品がお持ち帰りできます。

 は適切でしょうか不適切でしょうか。

 「できる」は「する」の可能形とみなされます。

 (5)は行動するのは店側なので、謙譲語Iの一般形「ご〜する」の可能形「ご〜できる」を使えるので適切です。

 (6)は行動するのは客側なので、尊敬語の一般形「お〜になる」の可能形「お〜になれる」が適切であり、謙譲語Iの「お〜する」の可能形「お〜できる」は不適切です。

 ちなみに「お持ち帰りになれる」は、二重敬語に見えそうですが、「なる」の可能形が「なれる」なので尊敬語の可能表現となります。「お〜になられる」が二重敬語です。





最後に

 今回は「ウチとソト」について述べました。

 敬語はウチとソトで使い分けるものです。

 ウチは下げ、ソトを上げる。

 この基本を守っていれば、敬語の間違いに気づきやすくなります。




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