第4話 読専論 転生者はなぜ『宗教』に対し無関心なのか
私は『転生もの』の中でも『悪役令嬢もの』が好きである。
主人公はスペックこそ高いものの自身や周囲に多大な問題を抱えており、バッドエンドな未来が見えている。それを努力と機転で回避しハッピーエンドを模索していく話は、読んでいて楽しいものだ。
ただ、疑問に思うことも多くある。
その一つが『転生者の多くは、なぜこうも『宗教』に対し無関心なのか』である。
転生もののオーソドックスな展開として、今世に生まれ落ちた時から前世の意識がある、もしくは今世を過ごす中で衝撃的な体験――頭を打つとか死にかけるとか婚約破棄されるとか――をし前世の意識が蘇る、というものがある。
そして失神したり高熱を出して寝込んだりした後に、今世と前世の意識が交じり合ったりとかして落ち着き、ハッピーエンド目指して邁進するのだ。
この展開自体に文句はない。
ただ、前世を受け入れて生活していく中で、転生者はこうは思わないだろうか。
なぜ前世の意識が今世にもあるのか。
なぜ前世の記憶が今世にも残っているのか。
そもそも意識や記憶は死後も残るものなのか。肉体が消えても残るものなのか。
これは所謂『魂』と呼ばれるものがある、ということなのか。
そうでなければ、今の私の状況は説明がつかないではないか。
このようについて考えたりしないのだろうか。
というかそもそも、肉体を伴った『転移』ではなく『転生』なのだから、肉体ではない『何か』がなければ始まらない。意識と肉体とが不可分で、肉体と共に意識も消えて無になるのなら、『転生するもの』がなくなってしまう。
なので『魂』かそれに準ずるものの無い『転生もの』は、ある意味存在しない。
『転生もの』に『魂』は不可欠なのだ。
ただ、『魂』が明確に設定されているにしろ、そうでないにしろ、なぜか転移者の多くは宗教に対し、全くと言っていいほどの無関心である。
宗教と聞くだけで忌避感を持つ人も多いが、冷静に考えてほしい。
『転生もの』である以上、『魂』がある。
『魂』があるのであれば、肉体が滅びた後の次のフェーズ、所謂『死後の世界』があるということだ。
というか、そもそも前世があっての今世なのだから、ある意味『今世』は『前世の死後の世界』である。『転生もの』とは『死後の世界もの』でもある。
――ちょっと想像してみよう。
どうやら私には前世の意識や記憶があり、『魂』というものは存在しそうだ。
では今世で死んで肉体が滅びたのち、私の『魂』の次段階はなんだろうか。
少なくとも『前世』の死後に『今世』があったのだ。
『今世』の死後に『来世』があったとしても、全くもって不思議じゃない。
その場合はどうなるのだろうか。
今世の意識や記憶を来世に持ち越せるのだろうか。それとも全く忘れてしまうのだろうか。
来世もハイスペックで、幸せな人生を過ごせるのだろうか。
そもそも人に生まれられるのだろうか。他の動物や虫などに転生する可能性はないのか。地獄のような世界には転生したくないが……。それとも天国のような、魂の安息の地があるのだろうか。
私の魂は、来世を含めどうなっていくのだろう。
これからも出来るだけ幸せでいるために、私はどう生きたらいいのだろう。
――こういったことを転生者が考えても不思議はない。むしろ考えて普通だと私は思う。
なにせ前世の『次』として今世があったのだから、今世の『次』を欠片も考えないのでは、あまりに蒙昧ではないか。
そしてこういった類の疑問を持ったのなら、その専門家たる『宗教』に無関心ではいられないはずなのだ。
実際に私が転生した場合を想像してみよう。
恐らく、一通り錯乱したのち、その世界の宗教を調べ、自分の体験に当てはまるものがあれば、それの熱心な信者になっても全くおかしくない。
そうでなくても、今世の生活が充実すればするほど、幸せであればあるほど、神に祈り宗教的善行をしようとするだろう。
今世の幸せが唐突に終わってしまわないように。
今世ほどとは言わないものの、幸せな来世に転生できるように。出来れば天国へ行けるように。
なにより、地獄などの恐ろしい来世が訪れないように。
転生とはそれほどまでに人生の価値観を一変させる、神秘的で宗教的な体験だと、私は思うのだ。
実際、九死に一生どころではなく、死んで新たな命貰ってるわけだし。
とまあここまで適当に書いた末、初めの疑問に戻る。
『転生者の多くは、なぜこうも『宗教』に対し無関心なのか』
私の考えでは、転生者が宗教に無関心でいられるはずはない。
信仰するしないは別にしても、多少なりとも関心を寄せざるを得ないだろう。
なぜなら、『転生』とはそれほどの体験だからである。
ではなぜ無関心なのか。
その理由は、私の思うに理屈ではない。
ただ単純に、現代日本人のほとんどは宗教心を抱くことが難しく、宗教の役割をあまり認めず、忌避感すら抱いているからなのだ。
多くの作品で、頭のおかしな陰謀を企てている『カルト宗教』や『狂信者』が登場している時点でお察しである。
故に、転生者も『何故か』魂や人生について真面目に考えることはほとんどなく、『何故か』宗教については全くと言っていいほど無関心になる。
むしろ逆に転生者が「私は無宗教だ」と言ったり、異世界の宗教をうさん臭く思ったりもする。
「『転生』とかいう一番のトンデモ神秘体験しといて、おまえは何言ってんだ」と思わなくもない。
そんなくだらない戯言を思いついた今日この頃である。
適当に書いたので、決して真に受けてはいけない。
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