第8話 記録番号009 各国の奇怪現象⑥

ー ロシア ー


二柱の天将によって成された中国二分化が起きるおよそ数分前、ロシアの首都モスクワのコンサート集会にて、ロシア大統領であるプーリンは参加している国民達に向けて演説を行なっていた。


「今この世界は、かつてない混乱を迎えている!!我が軍がウクライナを属国とさせる神聖なる大戦の破綻!ロサンゼルスの壊滅!しかしそれは我が国の勢いを止めることは不可能!!!共に戦い、再びロシア帝国として世界を治めるのだ!!!!!!」


『ウォォォォォォォォ!!!!!!』


プーリンは演説を終えて、感化した国民達は心を通わせて、自分たちが再び達成させる世界規模の野望に燃えていた。しかしそんな国民達の中でただ一人黙りこくっている男がいた。


(下らない…ウクライナ侵略戦争もあのまま放っておいても自分たちの国が滅ぶことなんて分かり切っているのに…。)


その男は大日本征覇神皇帝国…略させて日神帝国の最高戦力のうちに一人である《預言天将》ノストだ。今回彼は出動命令を受けた複数の天将によって展開される作戦である『中露米殲滅非軍事作戦』に参加しており、彼はロシアを担当する事となった。


(そろそろ中国二分化が始まった頃かな…正直ここに長居したくないんだけど。)


ノストは完全に洗脳されきっている国民達が大勢いる集会にいる事に嫌悪感を感じ、自身が動く合図が来るのを待っていた。


ドォォォォォォォォォォン………………………


考えた瞬間まるでタイミングを合わせているかの如くちょうど良く合図である中国からの轟音が鳴り響いた。


「おお………神も我らが成しえる偉業を祝福しているぞ……!』


それを自身に都合が良い事実へと変換させたプーリンを見て、国民達とは真逆にウヘェ…と呆れながらも、作戦の遂行を開始した。


コツ、コツ、コツ、コツ、コツ、コツ………………


その場から立ち上がってプーリンの元へと歩いていった。最初はスタンディングオベーションをしている国民達のおかげでバレずに近くまで移動できた。


コツ、コツ、コツ、コツ、コツ、コツ………………


しかし徐々に落ち着いていって着席し始めて、プーリンの方へと近づいている謎の男ことノストの存在を気づき初めていった。


コツ、コツ、コツ、コツ、コツ、コツ………………


ノストに気づいた警備兵達の半分が盾を構えてプーリンの壁となり、もう片方が銃を構えていた。


コツ、コツ、コツ、コツ、コツ、コツ。


目的地点に到着したノストはその場に移動を停止して、両手を上に挙げて取り押さえられた。しかしここまでの展開は全てノストの“脚本通り”だった。


「お初お目にかかる、プーリン大統領。しかし客人の対応がこれとは…おたくの国は礼儀がなってないな。」


ひどく落ち着いた様子で、冷静にロシア語でプーリンの向けて話しかけた。


「この聖域を侵したのはそちらじゃないかね?御客人招かれざる者。いかなる理由があってここに来たのかね。」


プーリンも壁の向こうからこちらの語り掛けに返して来た。煽り返すほどの余裕はある様だ。


「今すぐ常任理事国の座を降りるか、貴方を裏で支配する存在をその口から吐くかどちらが貴殿にとっていいかな?」


「私には向かったもの達がどういう末路を辿ったかご存知なのですか?」


「ああ、よく知っているとも。」


お互い一歩も譲らずに会話という名の言葉の戦争の気迫に国民達は蚊帳の外にいた。そして、ノストが仕掛けた。


「私はここに誓おう。手も、武器も、何も使わずに貴方を殺す事が出来る。」


プーリンに対する殺害予告にロシア軍全隊員が武器を構え、銃口を向けたが全く焦らずに平常心で居続けて、こう付け加えた。


「いや、訂正しよう……………………“出来るというより、もう出来た”。」


そう言われた後、プーリンや周りの人達が確認したものの、怪しいものも体や精神の異常も見られず、嘲笑したその時。


ドォン!!


なんと守るべき対象であるプーリンが兵士に銃撃によって撃ち抜かれてそのまま死亡してしまった。何が起きたか分からない国民はどよめいてその場から逃げようとしたが…。


ズドドドドドドドドドド!!!!!!


国民達も撃ち抜いて惨殺を開始していったのだ。なんとかその場から逃げる事に成功した者達も会場の外にいた兵士によって殺されてしまった。国民の心が一つとなった演説場から、鮮血によって染められて鉄臭い匂いで満たされた地獄絵図へと変貌を遂げた。


「さて、今殺したプーリンが影武者でも…任務は完了したから、戻るか。」


惨殺の悲劇の筋書きを描いたご本人は、まるでそこにいなかったかの様に忽然と姿を消した。



ー 太平洋北部 ー


『中露殲滅非軍事作戦』も終盤に近づいていき、場面は太平洋にいる《召喚天将》アインディアと、目の前にいるアメリカ空軍と海いるアメリカ海軍へと変わった。


「うわ〜ほんとに来たよ。政府も理不尽すぎない〜?こんなThe後衛にアメリカ海空軍を倒せってさ〜。」


アインディアは目の前の光景に悪態をついていた。一方向こうは…


『おい!?なんで日本が先回りされているんだ!?』


『こちら日本迎撃部隊!目の前に十三天将らしき人物と配下らしき二名の人物を確認!』


『レーダー探知不可の最新鋭だぞ!?』


『日和るんじゃない!向こうは目立った武器や特徴はない!!』


先回りをしていたアインディアの存在に驚愕と混乱していた。


「二人とも、“準備”すっから足止めよろしく〜。」


『御意に。』


『御心のままに。』


引き連れいていた二体のモンスター《真祖吸血鬼》レミティラと《憤怒霊魔帝》ラースが空軍と海軍の足止めをしに向かって、アインディアはとある“準備”をしていた。


仮想神話体系擬似具現ふんぐるい むぐるうなふ


詠唱を開始しながら、幾何学模様の魔法陣を形成していった。二体のモンスターだけでもなんとかなるが、作戦上もっと気を引くヤベー奴を呼ばないといけなかった。


仮定神格存在証明いあ いあ 


『おい、あいつ何かやっているぞ!』


『絶対に阻止しろ!天将がやる事を阻止しなければ俺たちは簡単に壊滅させられるぞ!』


向こうが何かを行なっている事を察したアメリカ軍は、ミサイルや搭載された銃火器など遠距離攻撃で妨害しようとしたが、


「糸尊き恩方の神聖なる儀式の邪魔など、無礼な!!!」


「人間如きが下賎な真似を!!」


足止め役の二人によって、儀式の妨害を阻止された。


擬似神格物質界顕現式完了るるいえ クトゥルフ


詠唱も終盤に差し掛かり、魔法陣の形成も完成されていった。アメリカ軍が諦めずに魔法陣に攻撃しまじめたが、全てが無意味だった。そして遂に、儀式が完了した。


神格召喚魔法式起動うぐふなぐる ふたぐん!!!!」


召喚術式のあらゆる準備が完了し、海に描かれた魔法陣が底が全く見えない黒い穴へと変えていった。すると、その穴から“何か”が出て来ようとしていた。


■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■!!!!!!


その“何か”は言葉にもならない恐怖を煽る咆哮を上げながら、徐々にその姿が明らかになって来た。


『な…な………なんなんだ!?アイツは!!』


『本部!!本部!!太平洋側沿岸より、超巨大不明生物出現!!! 推定全長は… 100…?120…?? 140m以上!!


至急応援を求む!応援を…!!! 』


それは140m以上もある体長で、青くヌメヌメとした胴体、タコの頭、コウモリの羽を背中に生やし、かつて外宇宙から飛来し地球の支配者として君臨した旧支配者。その名を


「大いなる神クトゥルー!!神の意思に逆らう反逆者に大海の罰を与えよ!!!」


■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■!!!!!!



大いなる邪神クトゥルフ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

第一次日本国世界征服大戦 朽舞仁 @akutu1baba2sakuragi3

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ