第7話 記録番号008 各国の奇怪現象⑤

ー チベット上空 ー


ロシアと中国への非軍事的侵攻が決定されてから約数時間後、チベットの遥か上空にて猫耳パーカーを着たオドオドとした少女が連絡を行なっていた。


「こ…こちら、せ、《殲滅天将》ライラ、…です。き、聞こえ…ますか?た、待機地点………に、つき、ました。」


『ほーい、聞こえるよー!こちら《無双天将》サディグア、同じく待機地点上海到着しましたー!』


『こちら《預言天将》、待機地点ロシア到着。』


『あー、あー、聞こえる〜?えー、こちら《召喚天将》、太平洋着いたよ。』


その正体は各国に人類の理解の範疇を超えた非軍事的侵攻を行い、殲滅していっている異能力者の精鋭中の精鋭帝国神命十三天将だ。出動命令を受けて、現在チベット・上海・ロシア・太平洋に待機している。


「こ…こんかい、の…作戦って…ち、中国と、ロシア…あと、秘密裏に…こちら、に、向かってくる……アメリカ軍、の…殲滅ですよね?で、それでも……中露が、常任…理事国を辞退………しなかったら、《大将軍》さんが……消すんですよね?」


正確なことを言えば《殲滅天将》と《無双天将》が中国に待機して、国を二分化させること、《預言天将》がロシアに待機して大統領を暗殺、《召喚天将》がアメリカ軍の相手だ。


『全く…俺ただ召喚することしか出来ないのにさぁ。俺なんかよりみんなの方が適任でしょ。』


『いや、お前は異世界から何か適当なもんを召喚して、アメリカの注目を一旦我が国からそっちへと注意を変更させるという重大な役割がある。』


『え、まじ??そんな事でアイツらの注意そらせんの?』


『それだけヤッベェ奴でも呼んどけ、神とか悪魔とか。』


『あー………まぁ、そのあたり呼んどくわ。流石に神格そのものを召喚すると世界にどんな影響与えるか分からないから、色々調整しとく。』


「じ…じゃあ………か、各自、準備‥が、とっ整った様、なので………は、はじめま、しょう。」


『『『了解。』』』


《殲滅天将》の合図を受けて、それぞれが通信を切った。今回の作戦を簡単に説明すると、要するにアメリカと中露に警告という名の攻撃をするのだ。今のところ中露はまだ常任理事国を辞任していないため、早くしないとこうなるぞという意思表示をするのだ。

最初に動いたのは《殲滅天将》だった。両手を前に出して、徐々に青色の塊が発生した。その青色の塊はどんどん大きさを増していき、温度は既に太陽と同等クラスにまで達した。それの正体は熱、光、音を凝縮させた超々々々々々々高密度のエネルギーの塊だ。これが放たれたら最後、どんなものでも分子すら焼き尽くし、文字通り灰すら残らないだろう。


「えい…!!」


ズゥゥッッッッッッドォォォォォォォォォォンンンン!!!!!!!!!!!!


それを、躊躇や容赦もなく放った。放たれたエネルギーは巨大かつ極太のビームへと形を変えていき、音速を超えてあっという間に上海へと向かっていった。万里の長城を貫いて溶かしていき、当たっている地形は簡単に抉れている。そのあまりにも強大な威力に比例して衝撃波もとんでも無く、太平洋にいる《召喚天将》も少し飛ばされそうだった。


「おーおーすげーなアイツ…さっすが《殲滅天将》、オドオドしている癖に容赦なく都市とか自然とか消し飛ばしてるよ…。」


その様子を遠くから感心半分ドン引き半分みたいな心境で眺めていた。


「まー…あれを防御もせず受け止めるアイツも化け物だけどな。」



ー 上海 ー


《殲滅天将》がクソヤベービームを放った時と同時時刻、《無双天将》は上海のスイーツ店にて大量購入した中国スイーツを眺め最高の60メートルのタワーの屋上にて堪能していた。


「ん〜〜!うんまい!!やっぱ本土の胡麻団子と杏仁豆腐は最高だわ〜!もうすぐ無くなるから今のうちに楽しんでかないとね〜🎶」


ヒョイヒョイと口の中に入れながら食べていって、あんなにあったのが全て胃の中に収まった。すると、遠くから青い光が確認されると、あっという間に上海が消しとばされていき、目の前まで迫ってきた。


「おー!!キタキタキタ!!!よーしやるぞ〜!」


あらゆるものを分子すら焼き尽くすビームが目の前に迫っているにも関わらず、まるで子供の様に目をキラキラと輝かせていた。


ズドドドドドォォォォォォォォォォンンンンン!!!!!!


建物や道を消しとばしていきついに目と鼻の先にまでやってきた。すると…


「ほい!!!」


ズガァァァァァァァンンンンンンン!!!!!!!!!


なんと、目の前にビームをアッパーで上へと軌道を変えていったのだ。しかもちょうど上にあった惑星などが破壊されていった。《殲滅天将》が放ったクソヤベビームは現状地球上に存在するあらゆる核兵器を上回り、まさに全てを破壊していく終焉の一撃といっていいものを、なんの変哲もないただの拳で上へと軌道変えたのだ。まさに、“異次元の一撃”だった。


「よーーし…任務完了!!!じゃ、本国に戻ってそのままゲーセンにでも行こっと。」


そんな異次元な事をやってみせた《無双天将》はルンルン気分で日本に帰っていった。





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