第2話

 俺はそれからエリンに言って奥の会議室を借りた。まぁ会議室といってもこじんまりとした場所だけどな。


「それで、なんで隠れながらここまで来たかったんだ」


「実は現在王城には魔族がいるのです」


 なんだって?だがそれはおかしい。この王都では魔族を探知するための魔道具と魔族を弾く防護結界が王城にあり、それを用いることで王都を守り、勇者互助組織まで情報が届いているのだから。その装置は代々王族が管理している。それが正常に届いていないってことは王族、またはそれに近しいものが加担していなければならない。


「それであんたは王族、あるいはそれに近いものから隠れながらじゃないと来れなかったってことか」


「はい。母も父も毒を盛られていて現在王城を仕切っているのは宰相なのです。ですが私ではどうすることもできず、それでどうか助けていただけないかと」


 だが、これはただの内紛じゃないか?魔族は関係あるのか?


「宰相の背後には魔族がいます。私が両親の体調を確認しに行くときに宰相の部屋の扉が開いていたので見てみると人の擬態を解いた魔族と宰相が話しているのがわかりました。そのとき宰相が毒を盛っていることとその毒を手配しているのが魔族であることがわかったのです」


 人に擬態することができて王都の結界も無視できる魔族か。これはマズいぞ。王城が支配されているせいで支援をこちらで呼んでも間違いだったことにされかねないし、それでこちらが異変に気づいたことがバレてしまう。ただ、このまま放置するわけにもいかない。今いるメンツでどこまでやれるかだな。


「わかった。こちらもできるだけ協力しよう」


「ありがとうございます!」


 そうなるとみんなも呼ばないとな。


「エリン!みんなに連絡を頼む」


「わかりました」


 酔っ払いどもだが、仕事とプライベートの堺はしっかりとしている奴らだ。連絡が行けばすぐに来るだろう。


「それで、姫様はこれからどうする?こっちで匿いながら過ごすか?」


「そうですね。私が城から行方をくらませたことで魔族には気づかれてしまっていると思います。少しの間お世話になります」


「了解した。これから他のメンバーも来るからそのときに顔合わせをしよう。それまで少し休んでいてくれ」


 俺も少し頭を整理するか。今の1番の問題は勇者を呼ぼうにも呼べないことだ。勇者がいなければ魔族は倒せない。思いつくのはどうにかして宰相を説得するか、なんとかして姫さんに勇者を呼んでもらってその間俺たちが守り続けるかぐらいだな。どちらもあまり現実的じゃないな。まぁこういう時はみんなの意見も聞きながら考えよう。

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