正身
俺は驚いた(目を覚ました)。
有朋は、
やくもたつ いづも やへがき つまごみに やへがきつくる そのやへがきを
紙には、
紀氏が鬼を
「
「ありがとうございます」
親に似ていないとか、似ているとか、人がそればかり心にかけるのは、どうしてなのだろう。
――分からない。
紀貫之が
「いで、歌を詠みたまえ(さあ、歌を詠みなさい)」
女は、声を出せないように、有朋に
内には、
その奥の、
「兄君、」
「誰とも知れない
望行をさえぎり、有朋は言う。
――望行も貫之も、有朋と女を止めるために、妻戸を開けたのだ。
「女の
俺は
紀望行と紀貫之が返り見る。
「すぐに静めて、
「いとこ
その声に、貫之は向き返り、
「
紀望行は、俺の居る帳台から目を離さずに言う。
「その女が、紀友則だ」
俺が言うと、貫之は、望行までもが向き返り、女を見る。
俺は言い
「
友則は笑み声を
「
「
貫之に問われて、友則は笑み声を止められない。
「
行き合った時、貫之に背を向け、姫が小さやかな身を震わせていたのは、怯えていたのではなく、笑いをこらえていたのだ。
友則に笑われて、貫之は顔を
「浮きながら
流れてとだに たのまれぬ身は」
紀友則が歌を詠んだ。
浮きながら消えてしまう泡にでも、なってしまって欲しい
流れていても
頼りにならない身は
――抱え上げられるように、俺の体が浮かび上がり…ちがう。体は、
東の
――皆、紀有朋の言の葉に眠らせられたのだ。
知りたいことは知れた。静められて、
「すぐに静めて、
忘れてしまうのか、知れたことも。
いやだ。
「消え、ろ…」
俺が振り絞った言の葉を、友則は
「そんな返しで、
もっと強い言の葉…俺は言った。
「死ね」
友則は声を上げて
「富士の
紀有朋までもが歌を詠み始める。
静められる前に、忘れさせられてしまう前に、
「
「
有朋に問われた
父君の所へ。
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