鬼の才

「『知る』というざえ(異能)は、うえとなられる御身おんみに、つきづきしい(ふさわしい)のではありませんか」

 在原業平ありわらのなりひらの声に、俺は我に返った。



「鬼のざえもって、『神』とあがめられる者もいる」

 紀有朋きのありともの声が言う。

「けれど、神には『にえ(食べ物)』を捧げなければならない」



 見えない。何も見えなかった。

 惟喬これたかが、「どうすればいいのか、聞いてみようか」と言った時。



「人を喰う鬼を、うえにするつもりか」

 紀有朋の声がとがめる(非難する)。



 すべてを知れる俺は、知った。

 俺のざえは、すえ(未来)を知れない。

 知れるのは、かた(過去)だけだ。



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