今の帝
「それはできない」
「皆を
「外に散るよりは、
「鬼に東の対を襲われたら、皆殺しじゃないか」
「――
「はいっ」
伯父・紀有朋に呼ばれて、
有朋は、喬男に向かって言った。
「喬男、
「
「ああ」
有朋の答えに、喬男は明らかに思いくずおる(がっかりする)。
「
紀望行は、
「さっさと、皆、逃げた方がいいよ」
喬男は、下ろした
「
「喬男。飲む水と、食べる物を持って来ておくれ」
「他に、欲しい物がある人~」
惟喬に言われて、喬男は振り返りもせずに、言い返す。
「
「えーぼーしー、えーぼーしー、えーぼーしー、」
鶯歌は飽きもせず繰り返して、烏帽子を両手で掴み、貫之は両手で、ひたぶるに(一生懸命に)押さえている。
「
言いながら、
男たちは、簀の子に座り、下ろした
「すまないね、貫之。
「いいえ」
「えーぼーしー、えーぼーしー、えーぼーしー、」
鶯歌と貫之の烏帽子争いを見て、惟喬は言う。
「『こんなこと』って、烏帽子を奪われそうになってることじゃないよ…」
紀有朋は、
「
「御前(おんまえ)、失礼します」
惟喬の前を、紀有朋は
「眠れ」
「えーぼ」
言いかけた口を開けたまま、鶯歌の
「
「もう大人になったのだから、父(
紀貫之は、鬼を静めることの他に、
紀貫之は口を開け、閉じ合わせた。紀有朋は、青黒い筋の浮く皺寄す手を、紀貫之へと伸ばした。
身をすくめる
「全子。ここに
「いいえ…」
「
「春宮様が、
全子は言い
「そのことで、
咎めるわけがない。俺がいないことに、気付いてもいないのだから。そばにいても、気付かないのだから。
「何が起きたのか、分からないのです。昨夜、気が付くと、春宮様が鬼と成っていたのです」
お前たち親子のせいだ。
「
「めどぎが要らぬことを…」
有朋が、下女を
あの家は、
紀有朋が、惟喬の方を向き、
「鬼を
「
惟喬は、わざわざしく(わざとらしく)
「これから
心長閑な声様のまま、惟喬は言い継ぐ。
顔を上げる
「
皆が、惟喬を見た。
「
「俺を静めるのは、明日、京に戻って、
「『
望行に呼び名を
「
「
高欄の上の俺を、背から抱えるように支えている望行は、おおどかに(のんびりと)言った。
俺の父。今の
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