許し
望行は簀の子に座り、
「あの松の向こう、川があるのですよ。ほら、船が行った」
思わず見ると、松の枝に飛んで来た鷹が止まった…
「
「親王様」と呼ばれ、惟喬は
「男は、内から出なさい。男ばかりで、
惟喬の腕の、鷹の爪が喰い込んだ傷の、甘い血は乾いている。
「血は止まってるよ。っ
惟喬が言っても、喬男は桶の水を手で
「痛い痛い痛い」
惟喬が声を上げても、続ける。
男たちは、惟喬を見て、痛そうな
「見ないふりをしてあげるから、烏帽子は、あげれば。」
見るに見かねて、
「それはできません」
紀貫之は、ひたぶるに烏帽子を両手で押さえ、簀の子に座り込んで、答える。
「えーぼーしー、えーぼーしー、えーぼーしー、」
鶯歌は立ったまま、貫之の烏帽子を両手で掴んで、
小さやかな
「姫君は、どうぞ、
女房は、「姫君」と呼ばれていることにも気付かず、
喬男は、
「痛くなかったのに、痛くなって来たじゃないかっ」
惟喬が
「体が熱くなったり、寒くなったりしたら、すぐ言ってよ」
「いやだよ。その
喬男が言うと、惟喬は顔をそむけ、墨染めの衣を脱ぎ、
喬男は、
「
喬男に聞かれて、皆、
「
きらきらしい
喬男は桶と墨染めの衣を置き、内に入ると、次々に懸盤を
内から出ると、
喬男は、
「鬼は、どうなったんだよ」
「
「何で~」
返り見て聞く喬男に、惟喬は言う。
「
向き直って喬男は、有朋に、つつめく(ひそひそ、言う)。
「あの人、
「ははは」
笑う
紀全子は、紀有朋に恋しているのだ――今も。
「鬼がいるなら、俺たち、ここから
「
立っている喬男を、
「
惟喬が言うと、
「どうぞ、鬼を静める許しを下さい」
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