鬼と姫
「あっ」
思わず声を上げる。
霞の向こうに、枝の揺れる音を聞いて、貫之は見上げる。
枝の折れる音、落ちる音がした。
音がした
雪のように散り積もった
「鬼に追われていらっしゃったのですか」
貫之が声を上げて問うと、姫は
「そうですか…」
貫之は、父に言われた通り、咲き
「花を
姫の側に落ちている桜の
姫は小さやかな身を震わせる。
紅の
姫の姿を見つめてしまっていることに貫之は、ようやく気付いて、自分の目の前に袖をかざした。
「
答える声はない。
当たり前だ。女は、人に声を聞かせても、姿を見せてもならないのだ。
かざした袖の
貫之はかざした袖の内に、目を戻す。
「供の方は、いらっしゃるのですね。よかった。――供の方がいらっしゃる所まで、お
答える声はない。
かざした袖の
桜の
貫之は、姫が指した方へ向かって、大きく声を上げる。
「姫君っ、置き忘れていますよ、桜っ」
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