第7話 夏休み
ついにその季節がやってきた。
うだるような暑さ。
セミの鳴き声。
美少女が薄着になる季節。
プールに海、青々とした大自然と共に過ごすもよし、クーラーがんがんにつけて部屋でゴロゴロするもよし。
そんな俺の夏休みがやってきた。
俺は悩んだ。
この夏をどうやって過ごすのかを。
夏休みの宿題は読書感想文と自由研究、あとは夏休み後の試験対策をかねた大量の参考書をやらなければいけない。
自由には代償がつきものなのだ。
「まずは図書館に行って課題を終わらせることにしよう」
俺はそう思い近くの図書館へと自転車を漕いだ。
ついでにあのパン屋にもよった。
だが、夏休みは休業中らしい。
「はぁ……まぁそりゃそうか、こんな時期にパンなんて誰も食わないもんな」
夏のうだるような暑さの中、わざわざパン屋に行くもの好きはほとんどいないだろう。
俺のような美女目当ての人間でもない限り。
気を取り直して俺は図書館に向かった。
涼しい。
クーラーが程よく効いていてとても心地の良い空間だった。
うるさい男子はいないし。
暑苦しくてきつい部活も乗り切ったし。
高校二年の夏休みというものを有意義に過ごすため俺は数日間図書館にこもった。
そして夏休みがはじまってから三日くらいでほとんどの課題は終わったのである。
やり切った達成感と共に俺は漫画やら映画とかアニメを見る準備を進め、貯めていたお小遣いを切り崩し、コーラを携え、ポテチを片手に高校デビューと同時に買ってもらったノートパソコンでコンテンツを消費しながら日々を怠惰に過ごす。
実によい時間を一週間ほど過ごした次の日。
スマホに連絡がきていた。
江島からだった。
なんでも暇だから一緒に映画でも見たいのだとか。
あと、感心なことに一緒に課題をやりたいらしい。
江島だったらいいかと俺は二つ返事で翌日に予定を開けた。
そして迎えた翌日。
チャイムが鳴り、迎えに出るとそこにいたのは、天使だった。
いやちがう、白いワンピースに小麦色にやいた肌をした可愛らしい江島だった。
俺はその魅力にしばしの間、言葉を失った。
薄着のせいで江島のただでさえデカいおっぱいがたわわに主張していたのだった。
俺は何とか冷静さを取り戻すと、江島に話しかける。
「よう、久しぶりだな」
「ん、久しぶり。しっかし暑いよな~」
靴を脱ぐその仕草もどこか上品で、普段の快活さとのギャップがすごかった。
江島は扇風機を見かけるとスカートの部分をたくし上げ、風に当たる。
俺は思わず視線を逸らす。
「それで、見たい映画ってなんだ?」
「そうそう最近買ったんだけどさ、この映画とかどうかな」
そういって彼女がカバンから取り出したのは、結構古い映画だった。
ホラーや戦争映画、アニメにファンタジーとジャンルもいろいろだった。
「あれ?琢磨、お前の両親は?」
「あぁ出張だってよ、しばらく戻らないらしい」
そう、俺の両親は夏休み中はほとんど出張でいない。
まぁ好き放題できるし部活の結果もあいまって俺への家族の信用は凄まじいものとなっているのだ。
そんなことはさておき。
「まぁまずは課題を進めようっていっても俺はもう終わってるけど」
「もう終わったのかよ、真面目だなぁ琢磨は」
「さっさとこういうのは終わらせるに限るだろ」
「まぁそれもそうだな」
そういって江島と俺はちゃぶ台に参考書を広げて、俺がほとんど教えるような形で課題を進めた。
そして一通り済んだ後、俺は彼女にラムネを渡す。
「ほらよ、これでも飲め」
「やったラムネだ!」
美味しそうにラムネを飲む江島はどこか色っぽかった。
そうして俺は彼女と一緒に映画を見る。
隣に座る江島がなぜか俺の腕をとって自分の胸を押し当てることに鼻の下を伸ばしながら彼女と一緒に映画を見る。
——————こんな日々がずっと続けばいいのにな。
その後、俺は江島といろいろ話した。
主に映画の感想だったが、読書感想文について、どんな本を借りたのかとか色々聞かれた。
あっという間に一日が終わる。
なんだかんだ時が経つのは早い。
そして彼女を俺は家に泊めることにした。
シャワーを浴びる音。
扉越しのシルエットでわかる江島のスケベボディ。
いかんいかん。
だぼだぼの俺のシャツを着た江島と一緒に俺は眠る。
なんだか修学旅行の夜のような楽しい気持ちになった。
でもあくまでこいつは幼馴染だ。
うん、そう幼馴染。
「えへへ、一緒だね琢磨」
そういって俺の布団へと入ってくる江島の頭を撫でる。
いつのまにか俺とこいつはもう付き合っているみたいなもんだなと惚けていた。
あぁいい夏休みだ。
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