第8話 一瞬ツーショット

 思い起こせば瞳の高校時代は明るい涼子と人懐っこい龍との生徒会活動で彩られていたといっても過言でない。


 高校入学してすぐに中学時代から親しかった水木涼子に誘われて、生徒会に所属し、そこで滝野龍と初めて顔を合わせ、一緒に活動するうちに親しくなった。高一、高二と三人とも別々のクラスで三人とも生徒会執行部の庶務を務めていたが、高二の頃には滝野龍が生徒会長、瞳が書記、水木涼子が会計を務めた。最終学年の高三で三人は一緒のクラスになった一方、引退したが、生徒会運営がスムーズに運ぶよう時折生徒会執行部をサポートし、手伝っていた。高二の頃、副会長を務めていた田中孝司や監査役の神辺美奈、その他生徒会執行部のメンバーとも頻繁に打ち合わせたり、生徒会運営のため協力し合った思い出がいっぱいある。


 龍が近づいてくるだけで、高校時代の生徒会での思い出が瞳の脳裏をかけ巡る。


「瞳とは卒業以来だよな」

龍が照れたような表情でポツリと呟いた。

「そうだね。大学は違ったし、五年前の同窓会も行かなかったからね」


—気づけば、さっきまで隣りで話し込んでいた三原真弓は少し離れた吹奏楽グループの輪の中にいた。


「久しぶりだし、このあと二人で話せない?」

「えぇっ、既婚者はさっさと奥さんのところに帰った方がいいよ」

「それが、そうでもないんだ。それに既婚者でも同窓生と少しぐらい話したって何も問題ないはずだよ」

「何か悩み事でもあるの?」

「悩み事というか…、瞳と久しぶりに話したいだけだよ」

「まあ、いいけど。少しだけね」

「じゃあ、この会が終わって皆を送り出した後、俺は会計で残るから、瞳も一緒に残って」

「わかった。久しぶりにコーヒーでも飲みながら、話そうか」

「ホント、七年ぶりだもんな。五年前は俺のせいで瞳は来なかったと思ったんだから…。今日は来てくれて良かった。じゃあ、あとで会計の時によろしく!」


 龍は満足そうな表情をすると、田村佳織を中心とした吹奏楽グループの輪の方へと移動した。


「滝野君、よかったら是非、奥様と一緒に聴きに来て」

田村佳織がピアノリサイタルのチラシを滝野に渡した。

「ありがとう。妻の都合もあるから聞いてみるよ」

「もちろん、奥様が無理だったら、一人でもいいのよ」

「まあ、仕事の都合もあるからね。聴きに行けそうだったら、連絡するよ」

「是非、よろしくお願いします」

田村佳織が深々とお辞儀するのに続いて、吹奏楽グループの三人もお辞儀した。






 

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