第4話 漠然とした距離感
司会の龍が最初にマイクを渡したトップバッターは少し厳つい雰囲気の大柄な青年だったが、瞳は一目見て、誰だか思い出せずにいた。
「みんな、久しぶり!町田寛太です。中学校で数学の先生しながら、野球部の顧問を引き受けて、生徒達と一緒に野球やってます。これからも仕事と野球を両立していくのが目下の目標。じゃあ、この辺で次に回すよ」
—そう、寛太君、思い出した!高校時代も野球部の部長で甲子園の予選インタビューしたことあったっけ。学校の先生になったんだ。とても向いてそう—
瞳は咄嗟に懐かしい気持ちで一杯になった。隣の南祥子も懐かしそうな表情を浮かべている。その後、野球部が二人続いたが、どうやら部活動で集まっているようだ。自己紹介に耳を傾けながら、瞳は南祥子にそっと耳打ちした。
「南さんって部活何だったっけ?」
「私?私は地味に天文部。原さんは生徒会だけだったっけ?」
「生徒会のメンバーはみんな新聞部も兼部してたんだ。その方が都合がいいから」
「そっか。そういえば、天文部にも天体観測会の活動インタビューに来たよね」
南祥子とそんなお喋りをしている間にも自己紹介は進んでいく。なかにはすでに結婚していたり、同級生同士で付き合っていることを発表するカップルもいて、そんな時会場は俄かに盛り上がる。同窓会に集まったメンバーは仕事に就いているか、大学院や博士課程、専門学校に進学中の人もいた。会場を見渡しそっと数えてみると参加人数は22名で、当時の人数の半数程だった。
卒業してから七年。過ぎてしまえばあっという間の年月というけれど、あの頃同じ教室で一緒に肩を並べて座っていたクラスメイト達にこんな漠然とした距離感を感じるようになるとは思ってもみなかった。瞳は自分の順番が近づくにつれて、何を話そうかと、内心、会場から逃げ出したいような焦燥感に襲われていた。
—涼子が一緒にいてくれたら、こんなに心細くなかったかな?
そう思いながら隣の南祥子を見ると、ウキウキとした表情で聞き入っている。天文部の南は理系で頭が良かった。実は合コン感覚で参加したというぐらいだから、自己紹介も気楽に楽しんでいるのだろう。
その時、マイクが南の手に渡された。マイクを手にした南は周囲を見渡すとニコッと微笑んだ。
「南祥子です。今、IT企業に勤めています。そろそろ転職しようかなと思ってるので、どこか良い転職先があったら、後で教えてね!よろしくお願いしまーす」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます