引きこもり毒をもって毒を制す
急いでススムにメッセージを送る。確認してくれただろうかとドキドキしながらスマホを何度も確認したが、一向に既読がつかない。
いっそ電話したろか。そう思っていたらお腹がぐううーっと鳴った。もうお昼だ。アユムくんもお腹が空いているだろう。
ちゃちゃっとお昼を用意する。アユムくんはうつむいていて、なかなか昼ごはんに手をつけようとしない。
「アユムくん、わたしはぜったいアユムくんを不幸せにしたりしないよ」
「ほんと?」
「うん。アユムくんは子供みたいなものだから。ひどいことをしたやつは絶対に許さないから」
「……わかった。食べる」
アユムくんはお腹が空いていたのだろう、もぐもぐと豆のサラダとパエリアを口にいれている。わたしも食べることにした。
どんな生き物も食べねば死んでしまう。だから、実家にいたときのわたしはほぼ死んでいたのだろう。
昼ごはんを食べ終えたと思ったら玄関がガチャガチャした。アユムくんはびくりと体を震わせて、自分の部屋に逃げ込んだ。
どんとこいだ。ドアに出ていくと、ススムだった。明らかに帰ってくる時間より早い。
「どしたの」
「メッセージ見た。ヤバいと思って帰ってきた」
「ありがとう。でも家までつけられてるわけじゃないと思うけど」
「あれならやりかねない。おそらくあれは我が家に寄生するつもりなんだ。結婚相手だって職があるわけじゃないだろうし」
動物病院でエンカウントしたときのことを説明する。ススムはうむうむと聞いてくれた。
「まずいなあ……かといって警察に連絡することじゃないし。どうしたものだろう」
「あのさススム、」と、わたしは考えた作戦を提案した。ススムは、
「毒をもって毒を制すってやつか」
と納得してくれた。
「上手くいくかはわからないよ、でもやってみる価値はあると思うんだ。要するに全員の幸せを願ってそういうことになったわけでしょ?」
「そうだな、それしかない。で、アユムにはなんて説明するんだ?」
そうだ、アユムくんにはもう怖い目に遭わせないという約束をしてしまった。この作戦は、その約束を破る可能性がある。
ススムと2人しょげていると、アユムくんがリュックを背負って現れた。フリースクールに行くつもりのようだ。ススムが車で送っていき、帰りに作戦に必要な人間をのせて戻ってきた。
この間我が家の玄関を突破しようとして、警察沙汰になった、あの親戚だ。チビ太はキャットケージに仕舞い、その妻の猫恐怖症のひとも連れてきた。
作戦の概要を話す前に、ススムの母親のことを、その2人に説明した。
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