第7話おまけ②【兄弟喧嘩②】

与太2

おまけ②【兄弟喧嘩②】




 おまけ②【兄弟喧嘩②】




























 「白波、いい加減にしろよ」


 「何が」


 「なんで俺の化粧水使っただろ」


 「使ってねぇ」


 「じゃあなんでこんなに減ってるんだよ!」


 「知らねェ。そもそも俺はそんなもん使わねぇ」


 「置いてある場所的に手が届くのはお前か兄貴だ。兄貴がこんなことするわけねぇ。お前しかしねぇんだよ」


 「兄貴に聞いたの」


 「聞いてないけど」


 「じゃあわかんねぇな」


 「兄貴はそんなことしねぇ!」


 「思い込みは良くないって兄貴いつも言ってるだろ」


 「これは思いこみじゃねぇ。これまでの実績から導き出した思考だ」


 「実績って何。俺だってお前のもん1回も使ったことねぇけど」


 「あるだろ」


 「ねぇよ」


 「あるよ」


 「ねぇって」


 「俺の櫛も俺のドライヤーも俺の日焼け止めも俺の靴も色々諸々使ってんだよ」


 ちなみに、ドライヤーや櫛は星羅のみ違うものを使っているようだ。


 髪に良いものを選んだとか。


 「使ってねぇよ」


 「お前ピノキオって呼ぶぞ」


 「使ってねぇって」


 「証拠は」


 「使ってる証拠もねぇだろ」


 「そういうのは大抵犯人なんだよ」


 「犯人ってなんだよ」


 「じゃあ指紋を採取する」


 「え、お前そんな専門的なこと出来んの。もう警察官になれよ」


 「なんか家にあるもんで簡単に出来たはず」


 「別にやってもいいけど、その場合俺だけじゃなくて家族全員分やるんだからな」


 「なんで」


 「お前は冤罪を平気で作る警察官になる心算か」


 「そもそも警察官にならねぇよ」


 「だよな。美容に気を使ってる暇なんてねぇもんな。忙しいから。ストレスもすげぇ溜まるからお前には無理だな」


 「俺はなんでもこなせるわ」


 「じゃあやってみろよ。けどな、言っておくけど指紋がついてたからって俺が使ったことにはならねえんだからな」


 「今更謝罪か」


 「違ェよ」


 「俺は心が広いから別に土下座しろなんて言わねえよ。心からの謝罪なんてお前には求めてねぇ。ただ弁償はしろ。新しいの買ってこい。それで赦してやるから」


 「だから俺は使ってねぇって」


 「いつまで認めねぇんだよ」


 「認めるもなにも、だから使ってねぇんだって」


 「じゃあ誰が使ったってんだよ」






 「白兄、星兄、見て見て!!!」






 「林くんごめんね。今ちょっと・・・」


 「・・・・・・」


 可愛い弟に呼ばれてそちらに顔を向けた白波と星羅。


 そこにいる弟を見て固まる。


 ニコニコ無邪気な笑みを見せている弟に、白波はため息を吐く。


 「林人、星羅の持ち物は玩具じゃねえんだぞ」


 「お肌つるつるになった!?」


 「つるつるってかびちゃびちゃだ」


 「オレも見て」


 「大地、星羅の持ち物は玩具じゃねえぞ」


 そこには、なぜかお肌が濡れに濡れた林人と、真っ白な肌になっている大地がいた。


 星羅が何も言えずにそこにいると、どこかへ出かけていた調が帰ってきて、弟たちを見てなんとなく状況を察した。


 手に持っている袋ごと星羅に向ければ、星羅はなんだろうと思いながらもそれを受け取る。


 「星羅悪い。こいつらに駄々こねられて、お前の化粧水と日焼け止め使わせちまった。新しいの買ってきたからこっち使え」


 「・・・・・・ありがとう」


 「林人、大地、星羅にごめんなさいしたか?」


 「してない!」


 「偉そうに言う事じゃねえぞ。ちゃんと言えよ」


 「星兄ごーめーんーね!」


 「三男星羅ごめん」


 林人の元気いっぱいの謝罪と大地の頭をちょこんと下げた謝罪に、星羅は何も言えなくなってしまう。


 「・・・うん、いいよ」


 「・・・・・・」


 じーっと自分の方を見ていた白波の視線に気付いた星羅は、小さい声で白波に疑って悪かったと謝るのだった。








 その日の夜、星羅は林人と大地と一緒に先に寝てしまった。


 風呂から出てきた白波は、ぼーっとテレビを見ながら髪の毛を乾かしていた。


 「白波」


 「んー?」


 「それ星羅のドライヤーじゃね?」


 「あれ、本当だ」


 「白波、それ星羅の櫛じゃね?」


 「あれ、本当だ」


 「白波―」


 「なにー」


 「お前の靴置き場に星羅の靴入ってっけど」


 「あれ、本当だ」


 「悪気がねえのは知ってっけど気をつけろよ」


 「はーい」


 「・・・本当に大丈夫か?」


 そのまま大きな欠伸をして寝床へ向かった白波の背中を、調は心配そうに眺める。








 「白波、いい加減にしろよ」


 「何が」


 「だから!俺の靴下履くなって!」


 「・・・え、これお前のだっけ」


 「そうだよ!!!!だいたい、お前が開けてる引き出しは俺のとこだから!」


 「・・・あ、本当だ」


 「ちゃんと確認しろよ!!毎回毎回お前に注意する俺の身にもなれよ!」


 「注意か?お前の注意って頭ごなしに怒鳴りつけることなの?」


 「何回言っても治らねえからだろ!!!」


 「心が広いって言ってなかったか」


 「~~~~~~~~~~ッッッ!!!」


 白波への怒りが沸騰しそうになったとき、星羅の肩をぽん、と叩く人がいた。


 後ろを見れば、そこには調がなんとも憐れむような顔をしている。


 「わざとじゃねえから」


 「余計性質が悪いんだけど」


 「あれ見てみろ」


 「・・・・・・」


 調に言われリビング奥の方を見てみると、そこには林人と大地によって落書きするキャンバスとなっている調の洋服とタオルたちがいた。


 「まじビビったから。この前風呂から出て身体拭いてたら身体に色がついてんの。新手の病気かと思った」


 「・・・・・・災難だね」


 「でもあいつらもわざとじゃねえから」


 「・・・・・・いや、白波とあの2人じゃ年齢が違うよね」


 「そうだよな。白波と星羅はあいつらよりかなりお兄ちゃんだよな」


「・・・・・・?」


 調は何を言いたいのかわからない星羅だったが、答えはすぐそこにあった。


「だから林人と大地みてぇな喧嘩はしねぇよな?」


 「・・・・・・」


 ニッ、と笑った調に何も言えなくなってしまい、星羅はまだ少し不服そうにしながらも小さく頷いた。


 調は星羅の頭を軽くわしゃ、と撫でると自分の服にお絵かきをしている林人と大地のもとへ向かって行った。








 「星羅、俺のプリン食った?」


 「プリン?」


 「惚ける心算か」


 「プリン?」


 「今謝ったら赦してやる」


 「プリンなんて食べてない」


 「じゃあ何食ったんだよ」


 「杏仁豆腐」


 「やっぱ食ったんだな」


 「え」


 「今自分で言ったよな。自供したな」


 「・・・・・・」


 食事のあとのデザートの件で白波が星羅に声をかけているのを、調は頬杖をつきながら眺めていた。


 その横では、林人と大地が同じように食後のお菓子をボロボロこぼしながら食べている。


 「誘導尋問だ。違法だ」


 「何が違法だ。俺の杏仁食っておきながら」


 「兄ちゃん!ゆーどーじんもん、って何!」


 「お前がよく引っかかるやつだ」


 「兄者、オレも杏仁豆腐食べたい」


 「買ってこねェとねぇな」


 「星羅、こういうときはなんていうんだ」


 「・・・・・・ごめん」


 「まあいいや。賞味期限切れてるだろうから」


 「なら最初から言わせるなよ!!」


 その様子を、調は林人と大地に服を引っ張られながら楽しそうに笑って見ていた。








 「まだ兄貴(はくあ)の方が上手(うわて)か」








 「兄ちゃん!!うわて、ってなに!」


 「兄ちゃんのことだ」















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