第一話 雪が降ったら・・・・(2)

前回の話

川瀬麗花は、不治の病を患い、約2年間病院で入院している。そんな中で、彼女は看護師たちが会話している内容をたまたま聞き、その噂を信じ、ネットで検索し”予約”。

すると、燕尾服着た”ユウト”と名乗る男性が現れる。

ユウトは、彼女を病院から連れ出し、最寄りの駅『桜港駅』へ。

そこには、彼女の友人、”皆渡 舞”がいた。

彼女は、”噂”のことは伏せ、舞とともに駅に停車していた5両くらいある白い列車に乗車したのだった。

乗車したものの、二人がいる客室はなぜか、重苦しい雰囲気に包まれていたのだった。

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無言の客室。

その重苦しい雰囲気を壊したのは、ユウトだった。


客室に入るなり、彼は、スピーカを口元に寄せ言葉を発した。


「今回は、ご乗車いただき、ありがとうございます。当列車は、桜港駅発車いたしまして、50分くらい走行致します。その間外の景色見ながら、懐かしい話ししながら、お過ごしください。」


一礼をし、また外へ出た。


「ユウトさんって、すごいよね。」


「え?」


「何が?って顔しているけれど、場を盛り上げようと、もしくは、こうやって話す機会を作ろうとしてくれたし・・・」


「そ、そうだね。」


「あのさ、麗花。」


「何かな?」


「身体、かなり細くなってるけど、何かあったの?」


「え、あ・・」

麗花は口ごもった。

「言いたくなかったら別にいいんだけどさ、心配になってさ。」


「病気、なんだ。」


「え?」


「治療法が見つかっていない不治の病気。それで、約2年間病院生活していたらさ、20キロくらい痩せたよ。ほら、ガリガリ。」


やせ細っている足と手を舞に見せつけた。


「不治の病気・・・・。何か原因でも有ったの?」


「わからないや。いきなりだったし。」


「そっか。」

腰を落としている舞を見て麗花は、また口を開き、


「舞、会うのさ、高校時代以来だよね。いきなり呼び出しちゃってごめんね。」


「いや全然。ユウトさんが家に来た時は驚いたけど。また高校の同級生に会えて私は、嬉しいけど」


舞はそっぽ向きながら肩より下まで伸びている髪を触りながら口を開いた。


「舞は、変わらないね_。」

「人って、あまり変わらないものかもしれないけどね。麗花は___うん。」

「言わなくても。」


列車の窓の外は吹雪になり、窓が白く白くなっていた。


「麗花、私をなぜ呼び出したの?」


「__特にないけど、また会いたくてね。」


麗花は優しく微笑んだ。


すると_


舞は唐突に立ち上がり、声を荒あげた。

「嘘だよ!__私は、あなたに何したか覚えていないの?」


「病気のせいかな。なんだったけ?」


「私にっ・・・・」


「なんのことだったかな。」


「本当に忘れているの?」


「うん。多分。」


運転士室からユウトが現れ通路を歩きボックス席に着いた途端、舞に四角い箱を差し出した。


「これは何?」


「間も無く終点です。降りられましたら開けて見てください。麗花様からのプレゼントです。」


舞は、麗花を見、それからユウトをみた。


「さ。どうぞ。」


「受け取ってね。」


「麗花、あんたから直で渡せばいいんじゃないの。」


「それは、できなくてね。ほら見たでしょ。ガリガリの腕。」


乗る前に見せたガリガリの腕を再び彼女に見せた。


「・・・っ」


「ユウトさん。間も無く終点ですね。彼女をよろしくお願いします。」

ユウトは首を縦にふった。

舞は麗花をみた。

「待って、あんたは降りないの?」


麗花は笑う。

「ゆっくり降りる。昔みたいにすぐ降りれないから。」

「そ、そうか。」


「間も無く終点の万駅(よろず駅)です。お忘れ物はございませんか。今一度ご確認くださいますようお願いします。」


万駅に到着した途端、舞はすぐさま降りた。

「さ、麗花。降りて___」

後ろを振り返った彼女の視線の光景はすぐ変わった。


「え?」


舞がいる場所、それは、桜港駅_。二人と出会ったところだった。


「え、さっきの電車は?さっきの万駅ってところは?どこ行ったの?」


混乱している彼女は辺りを見回した。

見慣れた光景がそこにあるだけ。

「え?」

手に抱えているものをもう一度見た。

「これは、もらった記憶はある・・・。

”降りられましたら開けて見てください。麗花様からのプレゼントです。”」

ユウトさんが話していたことを思い出した、彼女は急いでその箱を開けた。


中身を見た途端、彼女は、立ち尽くし、膝から崩れ落ちた。



第一話 雪が降ったら・・・・(3)に続く。


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宵を旅する列車 坂綺知永 @tomonagai

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