再起?DO!
塩
そうして人類は永遠の眠りについた。
そうして人類は永遠の眠りについた。
お約束の一文をパソコンに打ち込んだ俺は、キーボードから指を外して腕を組んだあとで、天井を見上げて「ふ~む」と唸った。
窓の外では目まぐるしく動き回る俺の思考回路とは裏腹に、スズメがちゅんちゅんと鳴いている。なんとも長閑な昼下がりである。
しばらくするとその音と重なるように背後からガチャリと扉が開くと「おんやぁ?」と、聞きなれた声が聞こえてきた。
「おーい、なにしてるんだぁ~?」
「まぁ、ちょっとひまつぶし」
話しかけてきたオダッチに振り向きもせずに答えると、俺はさも難しいことを考えていますという体で眉間を親指でポリポリと掻いた。
ちなみにこれは、俺が創作活動を始める前に行っている儀式である。
こんなふうに小説家っぽい仕草をして、難しいことを考えているふりをしていれば、凡人の俺でも神様があっと驚くアイデアを与えてくれるかもしれない……という、かなりよこしまな心でやっている毎度のルーチンワークだ。
そんなおまじないめいたことをしてウンウンと唸っているということは、つまりはまだこれといったアイデアが生まれていないということだ。頼む、神様。どうか気まぐれ起こして、俺にナイスアイデアを与えてくれたまえ。
「あれ? これひょっとして去年も応募したやつ?」
デュアルモニターに映し出されていた、とあるサイトのページを見たオダッチは、「おやおや、物好き」と冷やかすように笑った。そんなオダッチに対して俺は不機嫌を隠すことなく、わかりやすく眉をひそめたあとでフンッと鼻を鳴らした。
「まぁ、ちょうどゴールデンウィークのビックイベントも終わったし、次のイベントまで時間もあるしさ。これまでとちょっと違うことを考えて、気分転換でもしようって思っただけだから」
「たしかに、この同好会の連中はどいつもこいつも燃え尽きているけれどさ……」
ガランとした部屋の中を見渡したオダッチは、苦笑いを浮かべながら俺のすぐ横に置かれていた椅子に腰を下ろした。
「でも、お前の場合はリベンジマッチだろ?」
完全に目が笑っているオダッチを見てギンッと目を怒らせた俺は、ヤツが腰を今まさに腰を下ろした椅子の足を思いっきり蹴り飛ばした。
俺はある大学のアニメ同好会で会長をしている、いわゆる青春を拗らせた若造だ。俺がまとめているアニメ同好会は、その名の通りアニメ好きがあつまったオタク集団の集まりである。数年前まではそれなりに熱気をもった多くのアニメ好きが集まり、己の内に宿る欲望を世の中に向けて昇華するという、高いんだか低いんだかよくわからない志を胸に掲げて、それぞれに己の技量を切磋琢磨しながら活動しているなかなかアツイ同好会だった。
しかし、いまからさかのぼること三年前。
突如として日本のみならず全世界を襲った酷いウィルスの悪行のせいで、日常と経済と一緒にこの同好会もロックダウン。一時は世界経済までが止まりかけたが、それから現在に至るまでにいろんな人たち(俺を除く)が努力した結果、どうにか市場と世の中はそこそこに回復した。そんな上向きの気分とは裏腹に、今現在は景気と世相が下り坂に向かって一直線にひた走っているが、それでも最近になって制限されていた各種イベントやフェスなどが制約はあるものの開催されるようになった。そのなかのひとつが、ゴールデンウィークに東京国際展示場で行われた、いまや全世界のオタクの祭典コミケであった。
しかし、俺たちの中で止まっていた時間はあまりにも長かった。
長すぎた。
ただでさえ体を動かすことを創作活動という四字熟語を盾に、頑なに拒んできた俺たち『ザ・文科系』。外出しなくても良いという大義名分を手に入れた俺たちがしたことといえば、堂々と外界との接触を断つという、実に有意義な三年間の引きこもり生活であった。
必要最低限の動作以外は体を動かさず、しかし腹だけは減るのでムシャムシャと脳と腹に欲望と脂肪を溜めに溜め込む、これぞオタクの[[rb:鑑 > かがみ]]。そうして久しぶりに会った時には、ほぼ全員が見事に横に育つという第三次成長期を経ただけでなく、もれなく体重計とも国交を断絶していたのだ。
断言しよう。
俺たちの体力は地に落ちた。
だが、体力は落ちたかもしれないが、その分俺たちの胸の内に秘めた熱い気持ちと鬱屈した精神だけは、エベレストのように塵積って超巨大な山岳となっていた。例えるならば、三輪車に取り付けたF1エンジン。
俺たちのことを見た人々は、指をさしてこう言うだろう。
見ろ、まるで人がゴミのようだ!
そんな心技体などまるでそろっていない、放出する熱量と加減を完全に見誤り不完全体となっていた俺たちは、生活習慣や食生活をなにひとつ改善することなく、勢いのままにコミケに参入した。その結果訪れたのが、精魂共に燃え尽きてセミの抜け殻のようにカラカラになった、かつて人であった物体だったのである。
まったく情けない。
せっかく諸々の制限が解除されて物理的に自由になり出歩けるようになってきたというのに、全員が体調を崩して布団とお友達になるとは……。
そんなわけで、アニメ同好会は現在、開店休業状態であった。
ちなみに俺は、その災難を難なく逃れることが出来た一人だったりする。大学が閉鎖されている中、自宅で創作活動と推し活に勤しんでいた以外に、俺は筋トレにも精を出していたのだ。某文豪の言う、不健康なものを生み出すものは健康でなければならないを実践した結果でもある。部長たるもの推しと筋トレを絶やすことなかれ。
そうしてゴリゴリマッチョの体を手に入れて健康優良児になった俺は、このエアコン代とネット環境を気にすることなく自由に使える部室で、極個人的な創作活動をひっそりとこの教室で行っていたのだ。
「別にリベンジマッチじゃねぇよ。それに俺、去年はまったく本気を出していなかったから」
「はいはい。負け惜しみ、負け惜しみ。お前、一次で落選した後にもそんなこと言っていたけど、あれ完全に戦略ミスっただけだろ」
「だから、ちがうって!」
わざと嫌味っぽく言い続けるオダッチに、むかっ腹の限度を超えた俺は、奴の肩に思いっきりワンパンチを入れた。しかし、思いのほか威力がなかったようだ。ぺちんと肌が鳴って一瞬だけオダッチは表情を崩したが、またすぐにニヤニヤと気持ち悪い笑顔を浮かべた。
くそっ。
体力馬鹿は俺一人ではなかったか。
さすが俺の右腕、この同好会副会長なだけはある。
悔し紛れにチッと舌打ちすると、俺はオダッチの視線から逃げるようにくるりと椅子を反転させた。
「ってかさ、去年の落選はマジ、後出しじゃんけんでやられたもんだし」
吐き出すように言ったものの、中途半端な反撃が仇となった。俺の発した言葉は綺麗な弧を描き、華麗に俺の胸に突き刺さった。痛い。いろいろと痛いよ、俺。
「俺は負けたんじゃねぇ……!」
そうは言ってみたが、実際の所は完全なる俺の敗北だった。
昨年のコンテストに結果が出せなかったのは、単純に自分の実力が無かっただけだ。俺が酒をたらふく飲んだ勢いでパソコンに打ち込んだ言葉の羅列は、天才文筆家のようにアルコールによって感性が研ぎ澄まされた作品には一切ならず、多くの凡人と同じくその他大勢に紛れて消えるような、塵にもならないようなしょうもない超駄作だったのだ。
それでも俺は、たとえ自分が凡人とわかっていても言いたかった。
「第一やり方がなってねぇんだよ。お応募期間が終わってからボロボロと『あぁせい、こぅせい』って注文出してきてさ。そんなの、こっちからしたらマジ勘弁してくれよって話だろ……」
悔しさで丸くなった俺の背中からなにか感じるものがあったのか、「まぁ、たしかに」とオダッチは慰めるように相槌を打ってきた。
「あれは応募する側からしたら、投函した手紙が透明ガラスではじき返されたようなもんだよな」
「本当だよ。新規開拓狙ってオタクサイトとコラボした時点で、おおよその応募者のレベルがわかるだろうってもんだろうよ」
一度俺の口から出たポロっと出てきた文句は、この一年間人知れずに俺がずっと誰かに言いたくて、でも悔し紛れだと思われたくなくて言えなかった文句を次々と腹の奥から引きずり出し始めた。
「ほんと、終わってからだぜ? 『これはちゃんとした小説のコンテストなんだから、最低限のルールを守ったうえで作品づくりしましょうね』……なんてえらっそうに総評書きやがってさ。そんなのこっちは知らねっつーの。小学校に習った作文の知識ひっさげて、ただただ推し活を好きでやってるオタクだっつーの! 一字下げや、ビックリマークとかの後ろは一字あけるとか、点々とか記号はひとつじゃなくてふたつ繋げるのがルールですからね……なんて、そんなの知るかってんだよ!」
言葉と一緒に、どうやら俺の腹にあった弾薬庫に火が付いてしまったようだ。手始めに爆竹がひとつ弾けると、さらに貰い火を受けてバンバンと俺の口から文句となって外に溢れ出た。
「しかもそのサイトじゃ空白だって一文字換算なんだぜ? せっかく考えた話が空白で何文字も取られるなら、なにがおたくらの言う一万文字なんだって話だろ。一字下げが十行続いたら、それだけで十文字取られてよ、そんなの純粋な一万文字じゃねぇだろ。おまけに、オタクサイトはワードと違って改行のたびにスペース打たなきゃなんねぇんだぜ? 文字と一緒に手間まで取られて、労力の地上げ屋かよ! あと、未完成でもオッケーですとか書いていたくせに、未完成だと話としてはちょっと……とか言っちゃってさ。本気で知らねぇって話だろ」
「あぁ、そういえばお前の話、未完成だったなぁ。てかさ、お前メチャクチャ総評を読み込んでいるじゃないか……」
同情しながらも、オダッチは笑いをこらえるのに必死な様子だったが、「しょうがねぇだろ!」と俺は声を荒げた。
「ここの同好会でいちばん売り上げてる俺が一次で落選だぜ? 作品のどこに落ち度があったか気になるだろうが!」
俺は自分の頭が自制が聞かないほどヒートアップしているのが分かったが、一年間誰にも言えずに悶々とした気持ちを抑え込んでいた心の蓋が、暴発した爆竹と共にどこかへ吹き飛んでしまったようだ。
「そもそもこっちは小説家になろうと思って応募したんじゃなくて、そっちがそういうコンテストやるんなら、ちょうどオンラインイベントも終わったばかりだし面白そうだからやってみましょうか? って、つい出来心で話を作って応募してやったのによ? しかも、そっちがこれで良いですよっていう応募要項だから、それならこういうアイデアどうですかねって話を作ったのによ? 未完成かもしれなかったけれど、そんな言い方ねぇだろって話だろ。そんな未完成の話でも、寝る時間を割いて無い知恵絞って考えた俺の、あの睡眠時間を返せっつーんだよ。だったら俺はもっとゆんゆんの話考えたっつーんだよ!」
ちなみにゆんゆんとは、当時俺がハマっていた作品に出てくる女の子だ。
この萌え萌え小説を書くことに、この時の俺は全人生(といっても人生全体の約一割弱)を捧げていたと言っても過言ではない。なのに、その俺が大量のアルコールと、ちょっとの気の迷い、そしてこれでひょっとしたら世に出ちゃうかもしれないという、欲の芽がちょろっと生えて作ったせいで、作品と一緒に創作意欲まで根絶やしにされるとは誰が思おうか。自他共に超駄作であったことは認める。それを加味しても、なんとも酷い言われようではないか……。そんなわけで、完全に八つ当たりと自覚しながらも、応募結果と批評を読んだあと俺はひとり憤慨してしまったのだ。
たぶん、そう思っているのは俺だけではないと思っている。
きっと、たぶん、ぜったい、頼む、お願い、誰かそう思っていて。
「今思い出しても腹立つぜっ!!」
[[rb:スペース > S]][[rb:ファンタジー > F]]でもなく、[[rb:少し > S]][[rb:不思議 > F]]でもなく、[[rb:すっげー > S]][[rb:不満 > F]]をハァハァと顔を真っ赤にしながら言い切ると、俺は思わず浮いた腰をドスンと椅子に戻した。鼻息荒い俺を見て、下手な刺激を与えたらこちらまで貰い火を受けて火傷すると察知したらしい。オダッチは「まぁまぁ」と宥めるように声を柔らかくした。
不服ばかり申し立てる俺に嫌気がさしたのか、話題を変えようとふいっとデュアルモニターに目を移したオダッチが目を白黒とさせると、「おやおや?」と声を上ずらせた。
「あれ? ひょっとして向こうさん。今年は条件変えてきた?」
驚いた様子のオダッチに対し、俺は鼻くそをほじりながら「あぁ」と頷いた。
「今回はあらすじも評価対象ですって言ってきてるぜ。未完結なら『未完結』ってタグ付けしろとさ。むこうも、ちょっとは前回ので学んだってことだな」
嘲笑している俺を見て、オダッチはまたからかうような口調で「ってかさ、俺はお前の上から目線もなかなかだと思うけど」と軽妙に言葉を返してきた。
「上からっていうか、俺は終わった後の後出しじゃんけんにとにかく腹が立っているってだけだから。最後の最後は、応募したその他大勢の作品にまで難癖まで付けてよ。レッドオーシャン狙うんじゃなくて、ブルーオーシャンを狙いましょうねって、かっこよく横文字を使ってきたんだぜ? そんなの、あんな共通書き出しでお題を出されたら、誰だってこぞってレッドオーシャン泳ぐだろうって話だろ。AI使って、近未来にぶっ飛んで、終末思想にまみれた世界で起死回生狙いますって話を考えちゃうのが筋だろ」
「確かにお前の作品、見事な紋切り型だったよな」
「うっせーよ!」
また頬を膨らませた俺に、「あぁ、なんか去年の夏に、いきなりレッドオーシャンとかブルーオーシャンって言い始めたのはそういうこと……」と、呆れながらオダッチは頷いた。
ちなみにレッドオーシャンとは、血で血を洗う「真っ赤な海」のような競争の激しい市場を指す言葉だ。それに対する言葉がブルーオーシャンで、ようは競争相手が少なく勝率が高い場所……というのを表す言葉らしい。
それが経済用語だと知ったのも、俺が去年に挑戦したこの小説コンセストだったりする。大学生なのになんも知らねぇのな、オレっという話だが、とりあえず俺は去年の夏に心を砕かれたついでにちょっとだけ賢くなってしまった。これもまたなんだか癪に障るのだ。
一次で落とされた俺は、サクッと『その他大勢』と一緒に批評を受けることにまったく納得していなかった。そこで、ちょっとだけ悩んだ末に、恥を忍んでオダッチに応募した作品を見てもらうことにしたのだ。——……が。
「お前、めっちゃ足元見られてんじゃん」
多少なりとも褒め言葉が返ってくるかと思いきや、この男から戻ってきたのは審査員と同様の慰めとも酷評ともいえない批評だった。さらにこいつは、こちらが頼んでもいないのにご丁寧に二次審査を通過した作品にすべて目を通してくれたようで、「お前の作品なら落ちるわ。残っている作品と比べたら土台からして違うわ」とバッサリ切り捨ててきたのだ。
悔しかったり悲しかったりで、このときばかりはさすがの俺も目の前の現実から完全に目を逸らした。
「けれどさ、こんな本気揃いの作品が出るって知っていたら、俺だってもう少しちゃんとしたの作ったさ!」
そして最後に自分の口から出て来たのは、まさに負け犬の遠吠え。そんな、砕け散る寸前のプライドを瞬間接着剤でなんとか補強した捨て台詞に対しても、この心優しい友人は、「小さなコンテストだからって見下している時点で論外」と痛恨の一撃を俺の心臓めがけて撃ちはなってくれたのだ。
このあとしばらく俺たちの中が疎遠になったのは、ひとえに俺の器がゴマ粒より小さかったせいである。
「で。そんなけちょんけちょん言われたコンテストに、なんでまたお前は今回も応募しようと思ったわけ?」
コンコンとモニターを叩くオダッチに、俺はフンッと唇を尖らせた。
「……負けっぱなしじゃ悔しいだろ」
「あははははっ! それでこそ、お前だわ!」
ボソッと言った言葉に、今度こそオダッチは遠慮なく馬鹿でかい声で笑ってきたので、俺はすぐに奴から顔を背けた。さきほどまで憤怒で赤く染まっていた顔が、いまは頬だけ真っ赤になっているのを悟らせないためだ。
「次こそは一次通るから!」
俺はどこかに向かって宣言するように、声を大にして言った。
「ってか、次は二次も最終も通過するから! そっから俺は華々しく文壇デビューすっからっ!」
「おまえ……。よ……、欲の塊……。都合よく考えすぎ……」
さらに笑いを爆発させたオダッチは、勢いで椅子から転げ落ちた。
「おい、笑い過ぎ」
「だって文壇デビューって……。ライトノベルで拾ってくれるかもわからないのに……ぷぷぷっ」
わかっている。
俺の掲げた野望が、宝くじを買った時点で、これは絶対に当たっているはずだと誤解して、無駄遣いをするようなもんだと。けれど、一回躓いたハードルを越えるべく再び立ち上がり、この小さなハードルを飛び越えようと再チャレンジする俺の頑張りを見てくれっていう話だ。
「ま、応援するからせいぜい頑張れよ」
そう言って会話を切って立ち上がろうとしたオダッチの服を、俺はすぐにむんずと捕まえた。
「おっ、おい! ちょっと、なにすんだよ」
「誰が一人で再挑戦するって言ったよ」
「はっ?!」
驚くオダッチに反撃の狼煙を上げるように、俺は唇の両端をこれでもかというほど上げ、気持ち悪い笑顔をヤツに返した。その不気味な笑顔からなにかを察したらしい。
「ちょっ、やだよ。俺はいま忙しいんだから!」
慌てて手を振り払おうとしたが、俺は逃げ出さないようにさらにガッシリと服を掴んだ。
「こらっ、離せよ!」
「いや、離さん。ここに顔出している時点でおまえ暇人だろ。一馬力よりも二馬力だ。ふたりなら絶対良いアイデアが出るぜ。間違いない! 俺は前回みたいなドジを踏まないぜ。オダッチ、俺と一緒にファンタジーとも、AIとも、終末思想とも無縁の、すっげぇ話をお偉い先生たちにプレゼンしてやろうぜ!」
「だからって勝手に俺を頭数に入れるなって!」
「いぃや。俺一人の頭なら、中途半端な話を作ってレッドオーシャンまっしぐらだ。だったら二人で話を作ってブルーオーシャンにド派手にダイブしようぜ。もう、ちょっとしたアイデアは頭に浮かんでいるんだ。そこにお前のアイデアもくっつけて、話が出来たらさいごは同好会全員に推敲してもらえば、今度は一次落ちってことはないはずだ!」
掴んだ手を離す気が無いと分かったらしい。はぁぁっと深い溜息をついたオダッチは、「しょうがねぇなぁ」とドスンと椅子に座り直した。
「ってかさ、オレ今月末から夏に向けての薄い本制作に入るから。それまでのお手伝いな」
「わかってるって。俺だってその頃には次のイベントに向けてプロット練り始めるから、それまでには終わらせるさ」
Vサインを作る俺に、やれやれと肩を落としたオダッチは、めんどくさそうに頭を掻いた。
「で、とりあえず今おまえが持っているアイデアってどんなんだよ」
「おう、それなんだけどな。まずは書き出しの一文は決まっているんだよ」
そう言うと、先程打ち込んだ一文をオダッチに見せた。
この一文によって、去年から止まっていた俺の時間は動き出すのだ。
そうして人類は永遠の眠りについた。
再起?DO! 塩 @sio_solt
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