ーデートー3

 二人は繁華街へと入って行くと手を繋いだままだ。 どこからどう見ても周りからはごく普通のカップルにしか見えてないだろう。


 そう利之の女装というのは、元が女性っぽい顔とかをしているからなのか、化粧してウィッグをするとごくごく自然な女性な感じがしているようで、本当に周りの視線は全くもって利之には向いていない。 いや、たまに女装姿の利之の方に視線が向いているように見えるのだが、そこは気にせずに二人で歩き続ける。


 本当に今の利之からしてみたら、女装というのは一石二鳥という事だろう。


 俳優である利之も隠せるし、司と手を繋いでいても普通の男女のカップルにしか見えていないのだから気にする事もないからなのかもしれない。


 だから、こう普通に利之は司とデートを楽しむ事が出来ている。


「司さぁ、服選びに行かない? 確かに司は僕のでも着れてると思うんだけど、やっぱ、そこは僕は僕だし、司には司に似合う服っていうのがあると思うんだよね……だからさ……」

「え? 服!? だって私は全然、利之の服でいいと思うんだが……」

「それじゃあ、ダメなの! 個性がないんじゃん! 確かに僕の服でもいいのかもしれないけど、人には似合う服っていうのがあるんだからさ。 確かに僕は俳優でたまにファッション雑誌とかで流行りの服とかっていうのは着るけど、僕的にはあまり好きじゃないっていうのかな? だって、流行りの服っていうのは、勝手にファッション業界が作って、その服を流行らせて売るっていう事なんじゃないのかな? 大人の都合で流行らせているような気がしてるしね。 それに、モデルさんとかが着るから可愛く見えたり素敵に見えたりするだけで、これが一般の女性となると当然似合う人もいえるけど似合わない人もいる訳だし、なんかこう流行りって違う気がするんだよね。 だから僕的には自分で考えた方が個性があっていいと思っているんだけどな。 自分に似合った服を着るのが一番女性が輝いて見える瞬間だと僕は思うんだよ。 つまりはそういう事だから、僕に似合う服は僕に似合うっていう事で司に似合う服というのはあるっていう事だと思うけど……」

「利之って、こう自分的な意見みたいなのはあるんだな」

「いや、ああいう業界にいるから、多少は強引に生きていかないと潰れてしまうもんなんだよ。 自分の意見を言えないとあの業界じゃ生きていけないからね。 要は精神的にも強くないと生きていけないし、後は中学生や高校生じゃないけど、はっきり言って上下関係は激しいよ。 大物女優さんが大手の俳優さんまたはスポンサーとか、まぁ、先輩と言われている人達に嫌われてしまうと、あの業界から追放されるような事にもなりかねないしね。 警察官も上下関係っていうのは激しいのかもしれないけど、芸能界っていうのも上下関係は激しいよねぇ。 だから、精神的にも体力的にも図太くないとあの業界じゃ生きていけないと思うだよね。 それに、ドラマとかの役だって、監督に気に入られていれば直ぐに決めてもらえるけど、売れる前っていうのは、オーディションの毎日だからね。 まさか、芸能界っていうのは、そんなに厳しい世界だとは思ってなかったよ」


 そう半分愚痴のように溢してしまっていた利之。


 そんな利之の言葉に司は聞いていたのだが、半分位は理解出来ても半分位はきっと理解出来てない事だろう。 司がもし現代人であればもうちょっと位は利之が言ってる事を理解する事は出来ていたのかもしれないのだが。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る