ーデートー2
エレベーターを降りてからの二人は街中を歩き始める。
司の方はあの日以来久しぶりに地上を歩いているのかもしれない。
しかし司からしてみたら自分達が住んでいた所とは全く知らない世界。 確かに明治時代というにも存分に賑わっていたもんなのだが、利之のいる世界の方が更に賑わっている世界という事だ。
まずは家だって明治の頃とは違う。 江戸時代が終わったばっかりだった頃の民家というのはこう昔話に出てきそうな木の建物で屋根は藁だったのだろうが、明治時代には少しずつ外国の文化も日本に入って来ていて洋風の建物が増えて来たようにも思える。 だが、それは庶民ではなく気持ち的にお金持ちの家がそういった家に住めるというだけで庶民の暮らしは江戸時代とはあまり変わってなかったのかもしれない。
しかし人間というのは本当に凄いもんだ。 誰が考えるのかは分からないのだが、時代の流れによって様々な物が変わって来ているのだから。 中には変わらない物もあるのかもしれないのだが、明治時代と現代では相当違う物が沢山あるという事だ。
食べ物も本もお皿も全部が全部変わって来た。
だからなのか司は利之に、あるお店の店頭に並んでいた商品を目にすると、目を輝かせ、
「これは何だ? 利之……」
と質問してくる司。
「ん? これ?」
そう言いながらも利之は司に聞いて来た物の説明をしていくのだ。
利之は完全に司は昔の人だっていう事を分かっているからこそ、そこは馬鹿にしないで一個一個丁寧に説明して上げているのであろう。
利之の説明に司は納得すると再び歩き始める。
利之は急に司の手を取る。 もう直ぐすると繁華街に出てしまって司を見失ってしまう可能性がある。 だから利之は司の手を取ったのだから。
「……へ? 利之……?」
「これからの道はもっと人が多くなるからさ……しっかりと手を繋いでおかないとね……」
「え? あ、ああ……でも、利之は男で……今のこの時代っていうのは男同士で手を繋いでも大丈夫なもんなのか?」
流石の司もそこは気になってしまったのであろう。 そこは今も昔も変わらない所なのかもしれない。 そう男同士で手を繋いだりするという事だ。
「だから、僕は今この格好をしてるんでしょう?」
その利之の言葉に司の方は今日は利之が外に行く時にいつもとは違う格好をしていて、一瞬、戸惑った司だったのだが、今やっとその利之の言葉で利之の今の格好について納得出来たようだ。
「あ! それで、今日の利之は女性みたいな格好をしていた! って訳だ……」
「ま、それもあるんだけど……僕の場合には有名人じゃない? だからさ……この時代で有名人になると人が僕の所に集まって来ちゃって、司とゆっくり出来ないでしょう? 例えば司の時代だと誰が有名人になるんだろ? あ! もし、電球を発明した人が来日して来たら、司はその人に会いたいと思わない?」
「あー!」
その利之の言葉に再び納得する司。
確かに利之は俳優さんでテレビに出ている有名人だって事を教えてくれた。 そうだ確かにそうなのかもしれない。 今の利之の説明の通り、司の時代なら電球を発明した人が来れば司は会いに行きたいと思う。 それに他のからくり職人達も同じ思いをして電球を発明した所に行きたいと思うだろう。
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