ー恋人になれた朝ー2

 利之がそうやって司の事を見つめていると司の方も起きたのか、目を見開いた途端に利之の事を見つめて来ているようだ。


 暫く司は目をパチクリとさせていると、利之は司に、


「おはよう……」


 と笑顔を司に向けるのだ。


「おはよう……」


 司の方もそんな利之の笑顔に答えるかのように利之の方に向かって笑顔を向ける。


 今までの二人の朝というのは、まだ恋人ではなかったからなのか、今みたいに甘々な雰囲気ではなかったのかもしれないのだが、今の二人の朝というのはこう二人の間にこう甘々な雰囲気みたいなのが漂ってるようにも見える。 要は新婚生活が始まったばかりの夫婦みたいな感じだ。 流石に司はそういったもんは知らないのかもしれないのだが、利之の方はそういう事に関して十分に知っているという事だろう。


 だって利之は前に恋人も居た事もあれば、ドラマでは何人もの女性と付き合って来たのだから。


 だからといって今はドラマの中ではない。 ハッキリ言えば現実世界だ。


 ドラマというのは確かにドラマチックな話が多いのかもしれないのだが、『事実は小説より奇なり』という言葉があるように現実というのは小説よりもよりドラマチックな事があるという事だ。


 朝は朝で甘い時間を過ごしている二人。 しかも今日は利之の方も仕事が休みでこう二人で朝ベッドの上でゆっくりとした時を過ごしているのも初めての事なのかもしれない。


 そうだ。 司は今のこう言った甘い雰囲気みたいなのに慣れてはいないのかもしれないのだが、利之の方はきっと慣れているという事だろう。 きっとこういう雰囲気を作るのが得意なのかもしれない。 そこはドラマで役者をしてきただけあるという事だ。 だからこそ利之は役者になれたのかもしれないのだから。 それに利之というのは、恋愛ドラマがわりとメインなのだから、そんな雰囲気を持っている役者というのも考えられる。


 朝からお互いを見つめ合い、そんな仕草に微笑んでは利之は司の事を抱き締めたりして、本当に今は二人だけの時間を楽しんでいた。


「ねぇ、司……今日はさ、デートしに行かない?」

「……デートって何だ?」


 その利之の言葉に司は目をパチクリとしながら利之の事を見上げる。


「あ、そっか! 司はデートっていう言葉も知らないよねぇ? デート……っていうのはさ。 司と僕とで出掛けて行って、楽しむって事かな?」


 それだけでは分からなかったのか、司は今度首を傾げてしまう。


「んー、そうだよねっ! デートって言葉は言うだけでは分からないのかもしれない! じゃあ、とりあえず、今日はデートしようかっ!」


 利之はそう言うと決めたら即実行タイプなのかベッドの上へと立ち上がるのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る