ーお仕事ー

「だからそれは……さっきテレビ番組で見たような事なんだけどな……」


 そうだ、そういう事に関して、さっき利之が帰宅してきた時に司は見ていたのだから説明しなくても分かるだろ? みたいな感じなんだろう。 だが司の方は利之が言ってる意味が分からないのか、


「さっきのテレビ番組って?」


 そう綺麗に利之の言っていた言葉をおうむ返しして来る。


 分かっていそうで、きっと司の方は利之の言葉を本気で理解してないのかもしれない。 こう嘘偽りも無さそうな表情で利之の方へと視線を向けて来ているのだから。


 そんな司に利之の方はため息漏らしそうになるのだが、司はここまで来ると天然さんなのか本当に理解してないのかが分からなくなってくる。 利之みたいに司は役者ではないのだから、司の場合には天然さんという事なのかもしれない。


 要は素だ。 もっと言えば純粋。 そういう事に関して司の中での知識というのは一ミリも無い。 という事なのかもしれない。 いや、さっきテレビ番組を見ていたのだからちょっとは知識あるのかもしれないが、司の頭には全く印象に残ってなかったという事だ。 いや、その行為を恋人同士でやるって事を知らないに等しいという事だろう。


 なら逆に利之が司の体に教え込んでいけばいいのではないだろうか?


 そう考えると、利之は、


「ま、いいや……確かにそうだよね。 司はさ、昔の人間なんだから、そういった知識について分かってないって事なんだよね。 なら、僕がそういう事について教えて上げるよ。 僕達は恋人になったっんだから、そういう事に関して遠慮しないで出来るって事なんだもんね」


 そう利之は怪しい笑みを司の方に向けると、今度、利之腕は司の腰辺りからするりと伸び、こう怪しく司の胸の辺りで蠢き始める。


「ちょ、え? あ、待って……り、利之っ!」


 軽く胸の辺りを利之に触れられているだけで司の体は大きく反応してしまったのか、急に体をビクリとさせ利之の方に背中をのっけ反りさせてくる。


「ふーん……司の体って案外、敏感なのかな? って、普通に胸の方に触れただけで、そんなに体が反応しちゃうもんなの? じゃあ、もっと色んな所に触れちゃったら、もっともっと反応してくれるって事になるのかな?」


 そういつもの感じではないような利之に司の方は若干戸惑いながらも、


「ちょ、ホント……利之……やめっ!」

「大丈夫だって……僕の方はもうこういう事に関して経験済みだから、司は僕に体を任せてくれたらいいし……」

「いや……そうじゃなくて……っ! こ、恋人同士って……こ、こんな事するの?」

「そこはさぁ、司の時代と僕達が今生きてる時代では違うっていうのかな? 僕達が生きている現代では、恋人同士になったら、こういう事、平気やるもんなんだけど……。 そうお互いに好きだから愛し合う為にする行為っていうのかな? まぁ、きっと司の時代では、こういう事って結婚しないと出来ない事だったんだよね? ってか、司はこういう事に関して全く知識ないの? ねぇ、昔の人ってこういう事、どうやって覚えたの? 今現代っていうのは、ちょっと昔だったら本とビデオしかなかった時代だったけど、今は本にDVDにネットにってそういう情報が色々な所で溢れかえってるんだけどねー」


 その利之の言葉に司は反応してはいるのだが、利之の方はもう司と恋人になった途端、完全に司の事を抱くつもりでいたのであろう。 気付いた時にはもう司の肩辺りを舐め始めていたのだから。

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