11ー1
その利之からの問いに、司の方は気持ち的に甘い吐息を吐きながら、
「私の方も……ふぅ……心臓……ドキドキって……してるから……」
その司の言葉にクスリとする利之。
こう自分だけが司を好きではないという事を確認出来たから、きっと利之の方も安心出来たのであろう。 利之の方は司の体をふんわりと包むように抱き締めるのだ。
「司……本当に僕は司の事が好きだ……。 そこは本当に役者だからそんな事を言ってる訳じゃなくて、本当に本当に好きになったからこそ、本気の言葉なんだからね……」
その利之の言葉に司は再び首からを傾げてしまったようだ。
「利之……? 毎回思うんだけど……本当に役者という仕事っていうのは一体、どういう事をしている人間なんだ?」
こう毎回のように利之は司に役者の仕事について説明しているのだが、どうやら、イマイチ司の方は役者の事について理解してないようにも思える。
「まだ、僕の仕事についてよく分かってないって事かな?」
だが、利之の方も司との時代と違っているのは理解しているからであろう。 特に司に対してはバカにするような事はせず、そういった質問に対して真面目に答えてくれるようだ。
「僕がやってる役者っていう仕事は……」
利之はそこまで言うと、一旦、間を置き、
「普段は穂村利之っていう自分なのだけど、テレビでドラマとかの時っていうのは名前とか性格とかが変わって、その人になりきるのが僕の仕事なんだよ。 司の時代にだって本位はあっただろ? 例えば、お話の中にいる主人公、桃太郎とか? それを僕が演じるって訳……」
これで、分かったかな? という言葉を付け足す利之。
その利之の説明で司の方は今までの利之の話を総合して納得する事が出来たのか、今まで少し険しい表情をしていたのだが、何か閃いたような表情をすると、
「あ! そういう事だったのか! これで、利之の仕事について私にも分かって来たような気がするぞ!」
そこに利之は微笑むのだ。 そして利之の方は司の肩へと腕を回し再び甘い声で、
「ねぇ、司……もう、僕たちは恋人同士になったんだから、処理じゃなくて……最後まで出来るようになったんだけど……司はどうしたい?」
その言葉に顔を真っ赤にして利之の方に視線を向ける司。
「……へ? どういう事だ?」
今度、司はその事について利之に説明を求めているっていう事だろう。
いつどの時代から司がこの現代へと来たのかは詳しくは分からないのだが、その時代というのは今現代のように色々な文明的な事はない時代だ。 だから、現代の事について分からない事いうのはどんどん聞いて来ているのかもしれない。 それに司がいた時代というのは、こういう事に関して結婚してからするのが当たり前という時代なのだから、きっと司からしてみたら本当に知識というものがないという事だろう。
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