ー不思議な恋人ー1
今まではお風呂に入ろうか? と言うと、気持ち的に遠慮気味だったのかもしれないのだが、恋人同士になった二人にとってお風呂に入るっていうだけでも楽しかったり嬉しかったりしているのかもしれない。
今まで友達というのか他人同士に近かった二人だったのだが、恋人同士になった途端に急接近しているようにも思える。 いや、それが人間として当たり前の行動なのかもしれない。 だって完全に他人ではなくなったのだから、雰囲気そのものも温かい何かに包まれているからであろう。
それに元から司に関しては男同士でお風呂に入る事じたい平気だったのだが、更に今の二人にとっては楽しい時間になっているのかもしれない。
流石に利之の方は昔恋人がいたというだけあるのか、お風呂に入ると、昨日までは正面同士で浴槽に浸かっていた二人だったのだが、今日からは利之の上に司が座り利之が司の事を後ろから抱き締める感じで座っているのだから。
「司……僕の上に来て……」
「利之の上に……?」
そういう会話をしながらも司は利之の上へと腰を下ろすのだ。
体と体を触れ合わせる。 それは恋人同士じゃないと出来ない事だろう。
そんな距離感で聞こえて来るのは相手の心臓の音だ。
今は緊張しているからなのか、心臓の音が早く波打っているようにも思える。
「司……」
そう急に恋人になった途端に利之は甘い声で司の事を呼ぶのだ。 そして、
「司も……ドキドキってしてる?」
利之なんかは特に司がそうなっているのを分かっているのにわざと聞いているのであろう。
「……へ? あ、いや……?」
一方、司の方はこういう事に慣れてないのか視線を宙へと浮かせて言葉を詰まらせながらそう答えてしまっているのだから。
「僕は……司にドキドキしてるよ……」
もしかしたら自分の手の内を喋らないと司の方は恥ずかしくて話してくれないとでも思ったのか、そう話し始める利之。
「……で、司はどうなの? それとも、司は昔の人だから、心臓って何処なのか? っていうのは知らないのかな?」
利之はその言葉と同時に司の方へと視線を向けるのだが、司の方は利之とは反対側を向いているという事もあってか、司の表情までは伺えない。 だからなのか利之は更に司に要求したようだ。
「ねぇ、司……。 僕からじゃあ、司の表情までは見えないからさ……司は僕からの質問に答えてくれないと困るんだけど……」
利之の方は恋人になった瞬間から、こう気持ち的にSっ気があるようにも思える。 いや、本当に好きになったからこそ、もっとお互いの事を知りたいのだから、こう突っ込んだ言葉になっているのかもしれない。
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