10ー3
「あ、あのさ……利之は男でもいいのか?」
今まで顔を俯けていた利之だったのだが、その司の言葉に顔を上げるのだ。
一瞬、利之は司の事をキョトンとした表情で見つめたのだが、次の瞬間には微笑み、
「僕は司でもいいと思ったから告白したんだけどな……」
その利之の言葉に今度、司の方が一瞬目をキョトンとさせたのだが、急に安心した表情へと変えると、
「……ま、そういう事なんだよな……」
と答え、司の方も利之の方へと笑顔を向けるのだ。
ここでやっと二人の心の中が通じ合えたのかもしれない。
今まで一人だけだった刻が、今二人だけの刻として動き始めたのだから。
そう安心したからなのか、それとも告白の返事を貰って本格的に恋人同士になれたからなのか、今まで離れてソファに座っていたのだが、利之は司の隣へと向かい司の手を握ると、さき程よりも更に司に向かって微笑むのだった。
今までテレビが点いていた事さえ忘れていた二人だったのだが、安心したと同時にテレビの音が耳へと飛び込んで来たようだ。
テレビ画面の方へと視線を向けると、
「あ……」
「……確かに今は自分達に夢中で忘れてたね」
と司の言葉に利之はそう答える。
そうある意味、利之が司に告白をしたきっかけというのが、今テレビでやってる番組だったのだから。
だが、こういった番組を見て告白するっていうのもムードとかっていうのが無いかもしれないのだが、男同士の告白にムードとかっていうのは居るもんなんだろうか。 こうムード的な事が必要だと思うと、都会の中にあるビルの屋上にある展望レストランとかでディナーを楽しみながらとかっていう事なんだろうか。 となると、外でという事になる。 未だに世間的には同性同士の恋人というのはあまり認められている訳ではないのだから、外告白っていうのも難しいだろう。 ならムードとか関係無しに部屋の中できっかけがあって告白っていうのが一番いいのかもしれない。
それからの二人は一緒になって今さっきの番組を見続ける。
恋人になってからの二人というのは、この三日以上に近付けて今まで以上に相手の事を見つめる事が出来て、手を握ったりと恋人らしい事をし始める。 だからなのかこの楽しい時間というのは完全に時間の事なんか忘れてしまうだろう。
さっき二十二時だった時間が、今はもう二十三時と二十四時と過ぎていってしまっているのだから。 恋人同士で楽しい時間というのは寝るのもおしい位なのであろう。
フッと気付くと柱時計が刻を知らせて来るのだ。
「あ、流石にそろそろお風呂に入らないとね……」
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