9ー4
そう言って利之は着替え終えると、
「じゃあ、とりあえず、僕は下に行ってご飯買って来るからさ」
利之は愛用の長財布だけを持って家を出て行く。
確かに利之が住んでいるタワーマンションの一階には店舗が入っていてコンビニさえも入っているのだが、タワーマンションの十階以上に住んでいると一階に降りるのでさえ億劫だ。 だが、それでも今は司が家に居るのだから食べ物やお菓子や飲み物は必要となってくるだろう。
そこで利之は何かを思いついたようだ。 そうコーラを手にし、
「もしかして、司の時代にはコーラってなかったのかな?」
利之の中でちょっと悪戯心に火かついたようで、コーラを手にし司が食べられそうな物を買う再び自分の家へと向かう。
そして部屋へと入ると司がいるであろうリビングへと向かい、
「あのさぁ、司が居た時代って、どんな飲み物があったの?」
「あ、それかぁ? まぁ、お茶はあったが、他には……そんなになかったかな?」
「じゃあさ、コーラはあったの?」
「……コーラ?」
その利之の言葉におうむ返しをする司。 それは一体どういう意味なんだろうか? 知ってておうむ返しをしたのか、それとも本当に知らなくておうむ返しをしたのかは今の時点ではわからない。
天井の方に視線を向け考えているようなのだが、
「知らないなぁ?」
その司の答えに利之の方は心の中でガッツポーズ状態なのかもしれない。 そうしっかりと顔に出てしまっているのだから。
「じゃ、じゃあ! これを飲んでみてよっ! ほらさ、せっかく司はこの時代に来てるんでしょう? ならさ、色々な食べ物や飲み物を経験して行った方がいいんじゃないのー? だってさ、明治時代に戻ってしまったら、この時代の食べ物とかっていうのはもう二度と経験出来なくなっちゃうんだからさぁ」
「あ、まぁ……そうだね」
気持ち的に利之の方はニヤけてはいたのだけど、その利之の説得に司は納得してしまったようだ。
そう言って利之は司にペットボトルに入ったコーラーを渡すのだ。
「とりあえずさ……このボトルの蓋を回して開けてみて」
とそこは丁寧にジャスチャー付きで開け方を教える利之。 だって、これからどれ位の間、司がこの現代にいるのか? っていうのは分からないのだから、現代の物の使い方を司には教えておく必要があったからであろう。
「こうか?」
そう司は利之がしてくれているジェスチャーを見様見真似でやっていると、
「そこは、少し力を入れて開けるんだよ」
「ん? そうか?」
そう利之に言われて司は力を入れるとペットボトルの蓋が開き、中からは炭酸ジュース特有の音が響いて来る。
司はその音にも驚いていたようなのだが、そんな司のリアクションに気付きつつも利之は、
「とりあえず、その飲み物を飲んでみてよー」
とやはりそこはまだ悪戯心で促しているようで気持ち的にニヤニヤとしていた。
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