9ー3

「ゴメン!」


 急に司に向かい謝る利之。 


 そう利之は自分の家にある掛け時計に視線を向けて、どうやら司に向かいそう言ったようだ。 利之は普段から忙しい人間で今日も仕事がある。 今日はたまたま午後からの仕事で気持ち的に今時間というにはのんびりと出来たのだが、普段の利之だったら起きてから一時間、二時間位が限界だろう。


「僕はこれから仕事があるから、司は昨日同様になんか適当に遊んでてよ。 とりあえず、昨日一人でここにいてどうにかなったんでしょう?」

「え? あ、まぁ……そういう所ではどうにかなったのかもしれないな」


 と司の方はやっと落ち着いたのか、ベッドの上に半身を起こしてくる。


「じゃあ、僕の方はお風呂に入ってきてから、また、コンビニに行ってご飯買って来るからさ」


 そう言いながら利之は司の前で洋服を脱ぎ始めるのだ。 利之からしてみたら、もう司の存在に慣れてきたのか、それとも普段はここに一人で住んでるもんなのだから、もう普段通りにし始めたのかは分からないのだが、その脱ぎながらお風呂場へと向かったようだ。


 司は元々、明治時代の人なのだから、こう男の裸というのは見慣れているという所なのかもしれない。 そう明治時代というのは銭湯が主流だったのだから男の裸姿というのは見慣れているのだから。


 司がこの現代に来て三日目。


 何となく司は利之の家には慣れて来たのか、起きてベッドから降りるとソファへと向かう。


 そして一つ欠伸をすると、壁掛けのテレビの方へと視線を向けるのだ。


 しかし司からしてみたらテレビや電化製品というのは不思議なもんで、テレビなんかは利之に色々と説明してもらってはいるものの、まだまだ理解出来てない部分はある。 それに良く利之が言ってるのは電気という言葉だ。 そう明治時代にはその電気というのはエジソンが発明した事で有名なのだが、まだ日本には広くは伝わってはいないのだから。


 今の電化製品というのは本当に指一つで色々と出来る。 テレビだってリモコン一つでチャンネルを変えられる事も出来るのだから。


 そう司はこの時代に来てから、電化製品にテレビとゲームにしか触れてないようにも思える。 沢山の、電化製品に触れてみたい所なのだが、何処をどうやって触っていいのかが分からないのだから、下手に触れる事が出来ないという所なのかもしれない。 もっと利之に説明を受けてからの方がいいとも思っているのであろう。


 司がボッーとテレビを見ていると今までお風呂場から水音が聞こえていたのだが、急にその音が止み利之が出てくる。 部屋の中を裸で歩き始める利之。 どうやら服をさっき部屋の中で脱いだのだから脱衣所に洋服を持って行く事さえも忘れていたようだ。 利之はクローゼットを開け洋服を出して着る。


 そんな利之の姿を司は視線だけで追っていた。


 クローゼット。 これも明治時代にはない物で、洋服というのか袴さえも箪笥に入れていた時代でもある。


「なぁ、利之……服というのは、そこに入れるのか?」

「……へ? あ、そっか……」


 その司の言葉に利之はすぐに理解する事が出来たのか、直ぐに司に説明してくれたようだ。


「これは、確かに洋服を仕舞う箪笥ようなもんかな? 確かに僕だって実家にいる時は洋服には箪笥を使っていたけど、大きくなるとさ、洋服は洋服でも皺にならないようにって、洋服を縦に仕舞えるクローゼットっていうのがあるんだよねー」


 「ふぅーん」とどうやら司はその利之の説明を理解したようだ。

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