8ー5
「カメラや動画っていうのは、撮った物を記録出来るって事になるだろ? 要はこのカメラで記録されている事というのは過去の事で、今、テレビにいる僕というのは過去の僕。 で、ここにいるのが現在の僕って事で、今テレビで映っている僕っていうのは、そうだなぁ、司には芝居だって言ったら分かるのかな?」
「芝居って、舞台で見る?」
「そ、そう! それ! それをカメラで撮ってテレビを通して沢山に人に見てもらってるって訳……」
「あ! 成る程! そういう事なのかっ!」
その利之の説明に手をポンと叩き納得したような素振りを見せる司。
「だから、利之は今、テレビの利之とここにいる利之と居る訳だ」
「そういう事」
「過去と現在?」
そう急に独り言のように呟き始めた司。
「……ん?」
「カメラっていう物はないが、今の僕のような感じなのか?」
「んー、まぁ、司は過去から来たから、確かに過去と現在にはなるのだけど……。 まぁ、その時代にはそんな言葉はなかったのかな?」
「まぁ、そういう事になるのかもな……しかも、過去の人間がここに来れるなんて事は普通ありえない事だと思うしな。 じゃあ、現在より先の事をなんていうんだ?」
「『未来』」
「未来って言うんだな。 私にはこの時代の言葉でまだまだ知らない言葉っていうのは沢山ある。 だから、分からない事は、その都度、利之に聞いた方がいいって事なのかもしれないな」
「そういう事だね……」
そう話をしていると、どうやら利之が出ているドラマは終わってしまったらしく、
「んー、大人としては寝る時間的に早いんだけど……もう、寝る?」
「……へ? あ、そういや……全くもって時間なんか気にしてなかったのだが、もうこんな時間だったのか。 きっと、この電気と言われている物が体内時計を狂わせてしまっているのかもしれないな」
「……ん? そうなの? 司は本来だったら、何時にいつもは寝てるの?」
「もう、暗くなって来て、石油ランプとか点けても物が見えなくなってしまったら仕事は出来なくなるからな。 まぁ、夏は七時位までが限界で冬はもうちょっと早いのかもしれないな。 お風呂はそんなに入らないような時代だったから、後は夕飯食べて寝るだけだったからな……まぁ、早いと八時までのは布団に入っていたという事になるのか? ほら、今みたいにに一家に一台時計がある時代ではないから、そこの所は確かではないんだけどな」
「あ、そういう事かー。 じゃあ、司はもう今日は疲れちゃった? って、もしかして、眠かった?」
「あ、いや……それが以外に大丈夫なんだよな。 こう体を動かしてないからか? いや、そこは、前の時代の時も変わらないような生活してたしなぁ? でもな、不思議と疲れたような感じはしてないんだよなぁ」
「そっか……。 ま、いいや……そろそろ横にはなろうか?」
「利之がそう言うんだったら」
「じゃあ、そうしよ」
利之と司は利之のベッドへと向かう。 そして二人が横になって利之は電気をリモコンで消すと、辺りが暗くなる。 窓から漏れるビルの灯りもカーテンを閉めてしまえば、感じられなくなる事で部屋内は真っ暗になるのだ。
利之がそうやってひと息吐いた頃には、もう静かな寝息が部屋内に聴こえて来るのだった。
司は疲れて無いとは言っていたのだが、電気を消して直ぐに寝た所を見ると、結構体が疲れてるのであろう。 それに利之が帰宅して来た時に司はゲームをしていたのだから、ゲーム自体も目が疲れて来てしまうもんなのだから、きっと目には負担が掛かっていただろう。
司が寝てからは利之が使っているスマホの明かりだけがあるだけで本当に静かな空間となってしまった。
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