8ー3
こうして石鹸一個の事でこんなにも違うのだから面白いもんだ。
「あ、まぁ……もしかしたら、司の時代っていうのは、まだ、そんなに石鹸を作ってる所がなかったから高かったんじゃないの?」
「あ! そうなのかもしれないなー! 確かに石鹸を作ってる所みたいなのは、まだ、一箇所しかなかったように思えるからな」
「今現代は、そういう所は沢山あって、しかも、機械も出来てる訳だから生産も沢山出来るのだから、安くなったのかもしれないよねぇ」
「機械っていうのは何だ?」
司がそう聞くと利之の方は体を洗い終える事が出来たのか、利之が浴槽へと入ると司は浴槽から上がり体を洗い始める。
「機械っていうのはさぁ、生産量を上げる物って言ったら分かるかな?」
今度は利之が司の事を見上げる事になる。
「生産量を上げる物?」
そうまだ頭の中がハテナマーク状態で聞いて来てる位なのだから、まだ司はきっと理解してないのであろう。
「んー、じゃあ、その時代で機械って言ったらなんだろうなぁ? 流石にボタン一つで動くような物は無いだろうし」
利之はこう何か分かるようなもんがないかと考えてみているようだ。 顎を手に当て一点を集中して見ているのだから。
「あ! 前に昔話を見た事があるんだけど、機織り機っていうのはあった?」
「機織り機かぁ。 まぁ、それ位なら知ってるのだが……」
「じゃあ、それでいいよ! 司はそれをイメージしてくれたらいいからさぁ。 とりあえずね、機織り機を使うと気持ち的に着物とか作るのって手で作るよりかは早い訳でしょう? ま、簡単に言うと、人間の手で作ってない物っていう事かな? 今の時代の機械っていうのは、本当に生産能力っていうのは進化してるから、一秒間にいくつもの品物が出来ちゃうっていう時代な訳……だから、庶民でも簡単に買える値段になったっていうのかな?」
その利之の説明に司は納得したのか、シャワーを頭から浴びるのだ。
「……って、本当に今の時代っていうのは、毎日のようにお風呂に入るもんなのか?」
「まぁ、それはあるよねぇ。 ってか、毎日のように入らないと実際問題汚くない?」
「あ、いや……私の時代というのは、こうして今みたく一家に一つお風呂はなかった時代だったしなぁ。 それに、浴槽に使われている物も違う」
「……あ、確かに、そこも違うのかもしれないよねぇ。 僕の家の浴槽はプラスチックみたいなので出来ているけど、家によってはタイル質だったり木だったりしてて違うしね」
「私達の時代というのは、木だけしかなかったからな」
「やっぱ、時代の流れって凄いもんだよねぇ」
ちょっと前まで仕事を終えて家に帰宅してきても誰もいない暮らしをしていた利之だったのだが、司を家に連れて来てからは何かが変わったようにも思える。 そう一人だった時には電気を点けたって暗かった部屋が、人がいる事によって明るく感じられるのだから、人がいるといないとではかなり違うという事が分かったようだ。
その後、二人はお風呂から上がるとテレビを楽しむ。 そう司の方は利之に大分慣れてきたのか利之の隣りへと腰を下ろすのだ。
少しずつではあるのだが、司は現代の物にも慣れて来たという事なんだろう。
フッとテレビを見ていると、利之が出ているドラマが始まったようで、
「昨日はまだパニクってたから、大声だけで終わってしまったんだが、利之はここにいるのに、このテレビに利之がいるんだ?」
「あ、確かに司からしてみたら、そこは疑問に思う所なのかもしれないよねぇ? でも、どう説明したらいいんだろ? とりあえず、ここにいる僕とテレビに出ている僕というのは、昔と今と言ったらいいかな?」
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