8ー2
昨日とは打って変わって色々と話をしてくれる司の話に納得し始める利之。
しかし最初司を見つけて連れて来てしまった時には、どうしようかと思ったのだが、こうして話をしていると段々と楽しくなってくる。 初めて司を見た時には、司は現代人とは一風変わった姿で現代人に怯えていたような様子だったのだけど、慣れてくると色々と話をしてきてくれるし、これまた利之とは違う職業の持ち主なのだから、その事についても話をしてくれるのだから楽しいのかもしれない。 きっと利之の方も司が今している仕事に関しての知識は全く無いのかもしれないのだが、どうやら興味が無い訳では無さそうだ。 人間興味が無い物に関してはとことん興味は無い訳なのだから、会話というのにはならないだろう。 そう人間っていうのは自分に興味が無い物に関しては話は聞いているものの会話等せず返事だけになってしまうのだから。
「今日は、司がいっぱい話してくれたし、司の事も少し分かって来たし、そろそろお風呂に入ろうか? もう、司は一人でお風呂に入れそう?」
そう利之が質問すると、司は天井の方へと視線を向け間を少し開けると、
「あ、まぁ……シャワーの仕組みみたいなのは昨日ので何とか分かったのだけど、一回で覚えられたか? と言われれば、まだ、っていう所か?」
「……って、事は一緒に入るって事でいい?」
「ああ、まぁ、全然、私の方はそれで構わないんだが。 お風呂だって、私の時代では町の中に大きいお風呂場があって、そこにみんなが集まって入ってたからな。 今みたく一家に一台の時代ではなかったしな。 だから、一人で入浴っていうよりはみんなで入浴の方が慣れてるのかも」
その司の言葉に利之は大袈裟に手を叩くと、
「え? えー! そういう事なの!? 逆に司は男同士で入るって事に抵抗は無いって訳だぁ!」
「寧ろ、男が女性と入る事の方が抵抗あるのかもしれないな」
「あ、ああー……そうなのかもね」
まぁ、そこは利之の方も納得な所なのかもしれない。 現代だって男女の恋人同士じゃ無い限りは男女が一緒にお風呂に入るっていうのは抵抗があるのだから。
「じゃあ、お風呂の用意してくるね」
そう言い残し利之はお風呂の用意をしにソファから立ち上がる。
それからの二人というのは、色々な話で盛り上がって行っているようだ。 そりゃあ現代人である利之は昔の暮らしについても聞いてみたいだろうし、司からしてみたら現代の暮らしについて聞いてみたい事が沢山あるからであろう。
お風呂が溜まり昨日のようにお風呂場へと向かう二人。 男同士って事もあってか特に恥ずかしがる事なく服を脱ぐと、先に利之が体を洗い始め司は浴槽の中に浸かっていた。
「なぁー、利之……。 何で、今はこんなに石鹸の種類があるのだ?」
そう浴槽の縁に顎を乗せ利之の事を見上げながら聞いてくる司。
「石鹸……?」
そう現代で使われている石鹸というのは石鹸とは言わず、ボディーソープと言われているのだから一瞬、利之はピンと来なかったのかもしれない。
「あ! ボディーソープの事なんだっけ?」
そう独り言のように言うと、
「確かに石鹸は一つしかないのだけど、このチューブに入ってるのは、洗顔フォームと言って顔を洗う石鹸。 で、こっちの大きい容器に入っているのがシャンプーと言って髪を洗う石鹸みたいなもんなんだけど。 じゃあ、逆に司の時代はどうだったの?」
とりあえず司は利之の説明で今の時代の石鹸について学べたようだ。 今度、利之からの質問に司は腕を組むと、
「私の時代は、石鹸で……それらで体全部を洗ったもんだけどな。 しかも、石鹸というのは高くてな。 高級だからなのか木の箱に入ってて、ちょっと庶民には手が出しにくいもんだったよ」
「へぇー、今はこんなに安いもんなのになぁ。 まぁ、少なくとも一家に一本とか一個はあるのかな? そうそう! 確かに僕はボディーソープだから一本っていう数え方をするのだけど、まだ、石鹸を使ってる所もあるから、石鹸で数える場合には一個だからね」
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