ーカラクリ職人か?発明家か?ー1
「実の所は私にもそこは分かっていないのだよ」
「……はぁ!?」
利之の反応がごく当たり前な反応だろう。 だって今まで司は自分はからくり職人だって言って来たのだから、当然こうからくりで何かを作ってて、この時代に来れていたという事だと思っていたのだから。
「あ、いや……そうじゃなくて、なんていうのか、たまたまっていうのか、マシンという物ではないというのか。 確かに私はからくりで何かを作っていたのは確かだ。 だけど、私としては意識的にではなく、たまたまっていうのか……まぁ、要は自分でも分かってないっていうのか」
「……へ? そういう事? って、そういうもんなの?」
「よくは分からないのだが、どうやら、そういうもんみたいだ」
「じゃあさ、やっぱり、そうなんじゃないのかな? 司は現代の技術を学ぶ為にたまたまではあったのだけど、現代へと連れて来られた。 まぁ、誰にって言われると、そこは分からないのだけど、まぁ、運命的に偶然的に技術を学ぶ為に、でも何でもいいけどさ、そういうのっていうのはわりと現代のドラマとか漫画でもあるしね。 そう考えればいいんじゃないの?」
「まぁ、そういう事なのかもしれないな。 ま、とりあえず、そう考えるとこっちの時代で私がからくり物を作るのはいいって事なのかな?」
「いいや……そこは分からないけど、その時に司は何を作ってたの?」
「あー、とけい……?」
「時計? へ? でも、また何で?」
そう言いながら利之は自分の家にある時計の方へと視線を向ける。 要は司が言ってる『とけい』とは今で言ったらきっと『時計』の事を言ってるんだろうと思っているのだから。
「とけいっていうのは、あの時代、時の鐘だけでお昼だけしか鳴らしてくれなかったからな。 そう各家庭にはなかったって事だ。 だけど、各家庭にあった方が便利だろうなーって思ってな……それで、私は作ってみてはいたのだけど、気付いたら私はこの時代に来ていたって事かな?」
「あー、そっか……。 それじゃあ、やっぱ、司の言う通り、司がここにどういう風に来たっていうのは分からないままって事なのかー」
やっとの事で利之の方も司がここに来た理由が理解したようで、半分諦めモードでそう言うのだ。
「ま、気長に帰れるのを待つか? 司が作ってた時計をもう一度この現代で作ってみて明治時代に戻れるか? どうか? っていう事なんだよね」
「ま、そういう事になるのかな? ま、だから、私が持っているお金を利之が言うリサイクルショップとやらに持って行って現代のお金にしてくれた方がいいような気がする。 私の資金にもなるしな」
「あ、そっか……そういう事は僕がやらないといけないんだもんねー。 だってさ、司はこの時代に本来だったら生きてない人間なのだから、保険証も本籍も現住所もある訳じゃないんだからね。 そういう所、不便になるんだね」
そこに納得する利之。
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