7ー6

「でも、利之にはそういう面では迷惑掛けないっていう意味でいいんじゃないのか?」

「そうだね! 確かに司の言う通りなのかもしれないなぁ。 それで資金が出来たとするじゃない? そしたら、どうするの?」


 その利之の質問に司の方は首を傾げる。 そうそれだけでは利之が司に何を聞きたいのかが分からないからであろう。


「利之……それは一体どういう事?」

「え? あー、どう聞いたらいいのか? っていうのは分からないんだけどさぁ。 ただ、物っていうのはどういう風に作っていくのかなぁ? って……」


 「それだけでも分かるかな?」という風に表情に出しながらもう一度、司に聞いてみる利之。


「あ、そういう事かな? 利之は役者っていう仕事をしてるから直ぐに表情に出してくれるから何となく利之が聞きたい事が分かったんだけど。 要は現代の物を使って、どうやって現代と昔の時代を行き来するのか? っていうのを聞きたいんでしょう?」


 その司の言葉に利之の方は目を見開き、


「そう! 要はそういう事!」


 とオーバリアクション並に反応するのだ。 そこは役者をやってる人間なのだから普段の生活からして大袈裟に反応しているのかもしれない。


「んー、そこは、まだ、分からないんだけどね。 例えば時計を買って来て、その中にある部品を使ってとかかな?」

「あー、そういう事なんだ。 成る程ね。 じゃあ、司はこれからそういうのをやってけばいいって事なのか。 ま、勿論なんだと思うのだけど、司はやっぱ明治時代に戻りたいって事なんだよね?」


 まだ数日しか利之は司としかいないのに急に寂しそうな声問うのだ。


「あ、え? まぁ、一応はね。 でも、逆に私がその時代に戻らないでここで暮らしてもいいのか?」

「あー、そこは、まだ、分からないのだけど……」


 そう答える利之。 確かにまだたった二日しか司とはいないのだから、そう答えるのが妥当なのかもしれない。 だけど、なんでそう寂しく言ってしまっていたのであろうか。 そこは利之じゃないと分からない所だ。


「ただ、今はそう思っただけだからさ。 あ、まぁ、司がここに残りたいって言うんだったら僕がサポートして上げるっていうのかな?」


 利之はそう明るく返すものの気持ち的に顔が引きつっているようにも思えるのは気のせいであろうか。 利之は役者であって表ではいくらでも演じる事が出来るのではあるのだが、裏と表では思っている事が違うのかもしれない。


 役者になってからの利之は家族とは離れて暮らしていたのだから帰宅して来ても誰もいない生活。 だからなのか暗くて寂しい思いをしていたのだが、昨日司が利之の家に来てからは気持ち的に帰宅してきたも明るくて楽しい思いをし始めてしまってきているのだから、そういう気持ちになってきてしまっているのであろう。 だから利之はそう思うわず司に聞いてしまったのかもしれない。


 だが、きっと司にだってその時代での暮らしというのはある訳で、


「……って、司さぁ、昨日、君はここに来たばっかで、何も聞ける状態じゃなかったのだけど……」


 そこまで言うと今度利之は司の方へと視線を向け、


「司はその時代から来たんだって言ってたよね? じゃあさ、司は今何歳で、奥さんとか子供とかっていうのはいるのかな?」

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