7ー3
「ねぇ、利之……それ、貸して……」
そう司は言うと利之から筆を受け取り、再び字を書き始める。
しかし昔の人の字っていうのは今のように一つ一つ丁寧に書くのではなく、文字を繋げて流れるように書くからなのか本当に何を書いているのか? というのが分からない。 そこに首を傾げながら司が文字を書く姿を見ていた。
真剣に何かを書いている司。 その真横で気持ち的に乗り出すようにして首を傾げながら見ている利之。
最初、利之が司を見つけた時は、こう雰囲気みたいなのもこう匂いみたいなのも昔の人のっぽい匂いがしていたようにも思えるのだが、こうやって利之が使っている洋服を着て洗剤かボディーソープだかの匂い、髪の毛の方も最初気持ち的に脂ぎったような髪質だったようにも思えたのだけど、シャンプーのおかげでサラサラとした髪にもなったような気もする。 本当に昔の人というのは勿体ない。 だって、その時代にはシャンプーとかボディーソープという物はなかったのだから、こう例え美人であってもベタベタな髪質で現代みたくサラサラにはならなかったかもしれないからだ。 最近のシャンプーというのはいい匂いはするし、人間というのはほぼ毎日のように髪を洗うのだから清潔感もある。 時代が違うだけでこうも違ってきてしまうのであろう。
「これで、どうだ?」
そう言って司はさっきの半紙に何か書いたのか、それを利之に見せるのだ。 だが、やはりあまりにも達筆過ぎて読めないのだから、利之は首を傾げてしまう。
「……へ? これ、何を書いたの?」
「分からないのか? さっきは私の名前を読んでくれたのに?」
「あー、さっきのは、僕が最初に『福富 司』って書いてって頼んだから分かったっていうだけでさ……」
その言葉に司は納得したのか、
「とりあえず、『利之、ありがとう』って書いた」
そう司に言われて、書いてある文字をよーく読むと、確かにそう読めてくる。
「成る程ね。 ここにはこう書かれていたって訳だ。 ってか、司は筆で書いた方が書きやすい? それなら、これココに置いておいてもいいよ」
「ああ、私はこっちの筆よりかは今持ってる筆の方が書きやすいかな?」
そう言いながら司はさっき利之に借りた電子ペンと筆とを見て答える。
「あ、そっか……それなら、ここにそれ置いておくね」
そんな話をしているうちに、いつの間にか太陽は沈み人工的な光りが辺りを支配し始める。 当然、利之の家の電気もある程度暗くなってくると人工センサーも反応してか明かりが点く仕組みになっていた。
「……へ?」
そう司は声を裏返しながらも天井の方へと視線を向けるのだ。 それと同時に利之の方も天井へと視線を向ける。
「あ、コレに司は反応したって訳か」
そう言うと今度利之は電気について説明し始めるのだ。
「今の電気っていうのは、どうなってるか? っていうのは僕には分からないんだけどさ、周りが暗くなって来ると勝手に灯りが点くようになってるんだよ。 しかも、人がいるとか、いないとかでも違うみたい。 夕方になって暗くなって来ても部屋の中に人が居なければ電気は点かない訳だし、人が部屋の中に居る場合には点くシステムになってるっていうのかな? やっぱり、からくり物を作ってるとこういうのって興味あるの?」
その利之の質問に司は頷くのだ。
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