7ー2

 司は利之にそう言われ、とりあえず自分の名前を書き始めるのだ。 すると簡単に自分の名前は漢字で書いてくれる司。


「あ、やっぱり……そういう事なんだね」


 そう言いながら利之はタブレットを持ち上げると、ちゃんとそこには『福富 司』と漢字で書かれていた。


「確かに僕は司の名前を耳では聞いていたけど、漢字にするとこういう字を書くんだね」


 その司の字に納得したようだ。 司の字というのは古文書のように達筆過ぎて読みにくいは読みにくいのだが、最初に利之が名前を書いてと言ったのだから正確には読み方は知ってたという事になるのかもしれない。


「……って、利之……この筆も凄いんだな。 こんな先が細い物でこの板に書けてる」

「え? あ、そうか。 確かに司の時代には無いもんなんだもんね。 司の時代っていうのは……? あ、筆か! 僕達で言ったらお習字で書いてたんだもんね。 習字か……」


 利之はそこで何かを思い付いたのか、部屋にある倉庫みたいな所へと向かうと急にそこで何かゴソゴソと探し始めたようだ。


「あ、こっちじゃ書けないのか……」


 未だに司はさっき利之から渡してもらったペンを持っているのか、タブレットでは無い場所で書いてみたようで書けない事が分かったらしい。 そう独り言を漏らしているのだから。


 暫くして利之はその倉庫らしき場所から出てくると、


「これっ!」


 と言ってオーバーリアクション気味に司の前に持って来た物を出す。


 その利之が持ってきた物に首を傾げる司。 また現代の物を利之は持ってきてくれたのかと思ったのだが、


「これはさぁ、小学校の時に未だにみんな学校で習うんだけど……」


 そう言いながら利之は持って来た物の準備を始める。


 墨汁を固形の墨で擦ると筆を取り、半紙に書き始める利之。


 「『穂村利之』。 これが僕の名前……」


 そう言って利之は自分の顔の横に今書いた半紙を掲げ司に見せる。


「あ……!」


 利之が持って来た習字道具にどうやら司は気付いてくれたようで、


「あ! これ!」


 興奮気味に言う司。


「でしょー! 今現代でも学校の授業で習ってはいるんだよ。 やっぱ、これは字を書く為の基本って感じだからなのかな? それとも、墨と筆というのは日本の文化みたいなもんだからなのかな? ま、流石にそこまでは習ってないから分からないんだけど、とりあえず今でも墨と筆はあるんだよ……って事を言いたかった訳」

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