6ー3

「良かったぁ。 ゲームしてたんだ」


 とその人物は両手を膝へと付け息を切らしながら独り言のようにそう呟くのだ。


 そしてその人物はゆっくりと司の背後へと向かい、肩へと手を置いたと同時に司はビックリしたのかソファから飛び退く感じでその人物の方へと目を丸くしながら見上げるのだ。


「……利之か?」


 そう呟く司。


「今帰って来たとこ……。 まぁ、そのゲームやってたら、普通の反応だよね。 だって、それホラーゲームだもん……」


 そう言って利之は鞄やコートを簡単に今さっき司が座っていたソファに置くと利之は司の隣りへと腰を下ろす。


 すると利之の視界に入って来たのは未だに開けられていない食べ物だ。


「ん? あれ? 今日はまだ司は何も食べてないの?」

「あ、ああ……まぁ……」


 そう言いながら司の方もソファへと戻って来る。


「え? 何で? もしかして、現代の食べ物口に合わなかった?」

「あ、いや、そうじゃなくて……開け方が分からなかった」

「あ、あー! そうだったね。 確かに朝そこまで気が回ってなかったよ。 確かにこの袋系の開け方って最初は分からないのかもしれないし開けられないのかもしれないよね。 じゃあ、司は朝から何も食べてないって事?」

「え?」


 と司がそう答えた直後だっただろうか、司のお腹が鳴る音が響く。


「あ、そういう事……」


 その音で納得する利之。


「じゃあさ、今日の夕飯はこれ食べちゃおうか? 確かに賞味期限っていうのは三日位はあるんだけど、それでも、また下のあるコンビニに行って買ってくるよりかはいいしねぇ」


 利之はそう言うと、おにぎりの袋を開け始める。 利之はもう慣れているからか簡単に開けるのだが、司の方はその利之の開け方を見ていた。


「それは……そうやって開けるんだな?」

「あ、そっか……ゴメン……司にもこのおにぎりの開け方教えて上げないとだったね」


 司の言葉に利之はもう一つ手にすると今度は司に説明をしながら、そのおにぎりの袋を破る。


「ほら、これで袋の中からおにぎりを取り出せたでしょう? 司がいた時代のおにぎりってどんな感じだったの?」


 利之はさっき自分の分としたおにぎりを頬張り、もう一つは司に渡しながら話始める。


「……あ、私がいた時代のおにぎりの話か? そうだな……筍の皮で二個、三個で包んでたぞ……。 中身の無い塩おにぎりだったけどな」

「あー! 昔話に出て来そうな!」


 そう興奮気味に聞く利之。


 利之はそう言うと司にも分かりやすそうにテレビのチャンネルを替え大手の動画サイトを開くと、今司が言っていたような場面が出てくるような話を探し、


「これの事でしょう?」


 その画面を指差し聞くのだ。


 司の方は、その画面に出てきていたおにぎりを包んでいる筍の皮を見て興奮気味に二回程頭を頷かせるのだ。


「だよねー。 多分、今の人というのか、今現代において昔の出来事っていうのはきっと世代を超えて語り継がれている事だから、今でも昔話ではそう描かれているんだよ。 昔の人達がいたからこそ今現代の人が生きていけてるんだしね。 だから、司は凄いんだよねぇ。 って司はその時代で何をしていた人なの? なんていうのかな? 今だったら職業って言うんだけどさ」


 その利之の言葉に司は首を傾げ考えてみいるようだ。


「なんて言うんだろ? からくり物の研究者?」

「……? からくり物の研究者!?」


 こんな職業名を聞いた事の無い利之はおうむ返しをし、逆に首を傾げてしまう。


「これでも簡単にしたつもりだったんだけどな」

「あ、いや……なんとなくニュアンス的には司が言いたい事は分かったような気がするよ。 要は今で言ったら家電とか作る会社みたいな所でしょう?」

「あ、いや……また、それとは違うかな? だって、家電とは今で言ったらテレビとかの事だろ?」

「あー、まぁ、そこはそうなんだけど」


 どうやら司が言いたい事は利之には伝わらなかったようだ。 利之の方は俯き考え始める。


「だからだなぁ、からくり物を作り出しているって事だ」

「それはさっきと同じなんだけど……」

「からくり物じゃダメか?」

「からくり物じゃ僕には分からないっていうのかな?」

「んー、まぁ、そのうち分かるんじゃないかな?」


 その間の後に利之の方は急に手を叩き、


「だから、司は朝、テレビのリモコンを簡単に扱えるようになっていたって事なのか!」

「んー、それはどうなんだろ?」

「だって、そこは若干ではあるけど知識はあったって事なんだろうからね」

「ま、そういう事になるのかな?」

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